ちょいちょい気になったことを箇条書きにして、映画までこの記事に書き足していく。
「アングラードって女かと思った、髪が長いし。」
という感想を聞いた。
アングラードの髪、確かに長いねぇ。
加奈子より長い。腰まであるし、
ファッションというより伸ばしっぱなしで全然切ってないって感じ。前髪はあるけど。
うーん。髪は女の命とかも言うけど…、
でもジムの刺青と同じ意味じゃないかな。
あれは、アウトロー、普通じゃない人なんだという外見の記号だ。
海、異界に交わろうとするなら、
人間界、現世のスタンダードではいられなくなる。
琉花の父のような、いわゆる普通の社会人、水族館職員では、
本番、誕生祭のような出来事がすぐ近くで行われていても、感じることも関わることもできない。
長髪とか刺青とか、一種異様な、ハレの装いになることで、祭り、非日常に参加する準備、心構え、資格、そういうものが得られるんじゃないかな。
TPOを考えた格好は大事だ。
ハレの日とケの日では、まず身につけるものが違う。
お祭りにスーツを着込んでいったらシラけるし、
会社に法被やドレスを着ていったら気が散って仕事にならないだろう。
役に入るための衣装、小道具、ペルソナなんだな。
あ、でも海洋民族や海の仕事をする人達にとっては、刺青はお守りや身分証明でもある。
海難事故にあって、人相がわからなくなった遺体や部分遺体でも、刺青があればどこの誰かと判ることもあるという話だ。
刺青は日常のものっていう価値観、社会もあるんだけど、
研究者で白人のジムが、全身にびっしり入れるから異質さを表す記号になるんだな。
アングラードといえば、なかなかヒドイ目にあうよな。
なんで彼はあそこまでの目にあわないといけなかったんだろうか。
焼き討ち、全身火傷、失明・・・。
直前に猫が出てくるけど、好奇心は猫をころす、とか?
産屋、忌屋を覗こうとして目が潰れる。
水に近づこうとして、火の禍(わざわい)を受ける。
それらもあるけど、それにしてはな~。過剰な感じがする。
琉花は誕生祭に居合わせることができて、
アングラードはできない。
その差はなんだろう。男女?恋心や友情?好奇心?敬意や畏怖?
・・・・・
ああ、そっか。「おしゃべり」かあ。
琉花は、「言葉にすると、言葉にならない事は、ない事になっちゃうでしょ?」という感性の子だ。
アングラードにもその感性はあるんだけど、なにしろめちゃくちゃおしゃべりだ。物語にとっては解説役になってるんだけど、
しゃべりまくるなかで彼は失言をする。
「どちらが特等席につけるか、競争しよう」
これがマズイやつの感じ。
魔女にこういうセリフがある。
「それでわたしは罰を受けるのさ、迂闊なおしゃべり女としてね」
これはとても不吉で恐ろしい場面だ。ジプシーの占い師の老婆が、大量のネズミに変じてしまう。
彼女の一言がきっかけになって、良くない運命を招きよせたからだ。
アングラードが受ける禍は、そういうものなんだろうな・・・。
え、自分も相当なおしゃべり野郎なんで、ちょっと怖いんですけどwww
確かに、認識が進むほど発する言葉の持つ力、魔力が増すことはありそうな。
ジプシーの占い師、アングラード、本物の直感をもつ者なら、そういうことも解っておかないと危ないんだろう。
口は禍のもと、というのは古い知恵としてはそういう意味だな。
ていうか人間スケールで考えたら、
今からお産だよっていう時に、
ハイになってずっと喋ってるような空気読めない系の男は、分娩室に入れてもらえないわな。
特等席で見たいとか競争だとかハシャいでたら、
普通に考えて付き添いはお断わりで、スタッフにつまみだされるわww
出産に立ち会うにも、それなりの礼儀、節度、態度というものがあるよね。
寄り添う気持ちとか思い遣りがない人にはいて欲しくないよね。
あ。ていうか、
「あなたはしたことの結果を確かめずにはいられない」
アングラードに火をかけたのはジムか…。あるいは居場所をリークしたか。
南極でも酸素カプセルの前でちょっと怪しい雰囲気出してたしな。
ジムも優しそうで、なかなか複雑な人だね。そこまで愛憎こじらせちゃったか…。
アングラードのベッドに女性がいることとか、
空少年が海少年を守りたい理由とか、
そこはかとなく腐った薄い本を作れそうなネタなんだろうけど、
五十嵐大介作品の薄い本は需要なさそうw
アングラードとジムの関係性は、
前作魔女の占い師とニコラ、千足とひなたにも似てるし、
ディザインズのショーンとオクダにも引き継がれていくのかな。
訳知り顔でそそのかす者と、なにかを実行する力のある者、って感じのペアだ。
次は仲良くしろよw
と言いたいがどうかな〜。
一心同体という描写ならともかく、誰であれ持っている心と力にあまりに偏りがあってはいけないと思う。
力を持つなら、それの使い方を間違えない心も自前で持っていないとな。
そそのかされて行動したら、道を踏みはずす。
魔女で、千足にそそのかされたひなたは命を落とす。
「自分にとって大切な場所は、自分ひとりで発見すること、誰かのいいなりになってると気がついたら、立ち止まってみることね」
千足にだけは言われたくねーけど、これは本物の言葉だ。
クジラの歌で目覚めた隕石は、とめどなく水を生む石になるけど
それに似たやつが魔女でもあった。
生殖の石、ペトラ・ゲニタリクス
カンブリア紀の生命の大発生の由来になったという石で、
それが地球にやってきてしまって、とめどなく生命を生む。
そこら辺の物体が次々に、よくわからないでたらめな生き物に変わって、
そしてその生き物たちはみんな生き続ける機能を持たず、すぐ死んで積み重なっていくという。
あれは他にない印象的なイメージだったな。
魔女では、その隕石はとても迷惑だったので、もとあったところに帰すけれど、
海獣の子供では、隕石の力を受け入れて誕生祭となる。
魔女から引用「全ての石にはそれぞれ固有の性質があります。ときにはとてつもない力を秘めている。
でもその力が発現するには、その石が好む、あるいは嫌う条件がそろう事が必要なのね。
生殖の石はこの星の環境でだけ、その力を発揮する。
その条件は酸素とは限らない、湿度とか重力かもしれないし、
複合的なもの、何かの気配なんてのもあるかもしれない、ニオイとかね。」
あー、その条件がクジラの歌で、
ありふれたコンドライトの隕石が、水を生む石、精子の働きをする石として目覚めるんだね。
誕生祭で海少年と同じ状態だった海洋生物は、あれみんな女神クジラに呑まれて歌を聞いたのかな。すごいいっぱいいたけど。
神話級の存在と言い伝えられてるわけだ。あのヒト忙しいんだねぇ、重要な役だ。
世界観が続いてる…というか、
五十嵐大介の作品は、どれも舞台が現代だな、そういえば。
どの作品の内容も、今、ここで、すぐそばで起きたこと、起き得ること。
そう感じることなんだろうね。
作品世界はイコール彼の感じる世界で、すべて繋がってるのかな。
空少年が琉花を一度だけお姉さんと呼ぶけど、
空少年と海少年は人間と歳のとり方が違うような。
ジムが出会った鯨狩の島の少年もそうだったみたいだけど。
おっさんが子供の頃から姿が変わってないとか。
彼ら、海からきた少年達は大人にはならないのかもしれない。
永遠の若さか〜。
いや老いないだけで、肉体は失うみたいだけど。
基本的に不老で長命で、誕生祭の周期がくると光って消えたりするのかな。
その寿命はどのくらい…、まぁ死という概念がないとも言ってたけど。
アンデルセンだと人魚の寿命は300年ていうのもあるけど。
人魚の肉を食べたら不老不死が手に入るとかいうよな。八百比丘尼だ。
研究者たちは、ちょっと少年の肉を食べてみようとか思わなかったのかなw
少年たちの研究に財団とかスポンサーがついてるのもその辺が関係ありそう。
普通に考えたら、あんな検査の連続は虐待だし、人の水中適応の研究くらいじゃあんなドでかい船を出したり世界中の水族館や研究所が連携するような規模にはならないだろう。水中適応とか、そんなに興味ないしなwそんなお題では求心力がないw
不老長命の秘密、となればいかにも権力者やお金持ちが好きそうな美味しい話だよ。
まぁ多分食べてもそんなもんは手に入らな…あれ?
琉花は、泡、渦巻きをひとつ口にするな。それは海少年の一部でもある。
そうなると琉花は長生きするぞ…、だから歳とって語り部になる描写なんだな。
琉花は、魔女、異類、半妖、彼岸と此岸ふたつの世界をつなぐものになるんだろうな。
二つの世界の境、波打ち際で生きる者になる。
異類婚姻譚は、異界の者が帰ってしまう話が多いけど、
それこそポニョとか 最近はハッピーエンドの物語もある。
パターンとしては、ポニョのようにお魚から人間へ生まれ変わるとか。
うしおととらにも雪女が人間に変身して恋が成就する話あったな。
アバターなんか、主人公は地球人の肉体を捨てて、青い異星人アバターになって現地の娘と結ばれてる。
主人公、現世のものが異界へ赴いて馴染んじゃうパターンだw
っつーか最近の異世界転生モノは現世に帰ってくるつもりがないやつばっかりだしなww
波打ち際で生きていれば、きっとまた人魚やセイレーンとも会えるだろうね。
風薫る砂浜で、また会いましょう。なんだね。
アングラードは中性的な外見だ。
空少年が、「俺たちに近い、とても古い形質をのこすものだ」と言っていた。
人魚姫、セイレーンときて、アングラードは…濡れ女かなw髪のうっとうしさがw
あと水魔、という言葉で呼ばれてる。
そして、人魚のような少年たちと人間の祖先は同じものだったということかな。
生命は海からきた。人間も海からきた、ということでもあるけど。
スピ話なら、現行の人類は、複数の宇宙人の遺伝子のハイブリッドであり、
また3次元の地球に相応しい存在であるようということか、その遺伝子にはいくつもの制限、封印、ロックがかかっているという。
アングラードは、先祖返り。封印が少ないから優れた直感が働くのかな。
しかし、彼はやや傲慢だ。
それは意識のレベルと能力のレベルが釣り合っていないということでもある。
意識のレベルとテクノロジーのレベルは、釣り合っていなくてはならない。
アングラードは、ヒドイ目にあう。
彼は、能力に見合う心を持つことができなかったから、そういうことになったとも言えるかもしれない。
まぁ、生きてるからチャンスはまだある。
海に関わり続け、学び、成長していけるといい。
航海士になった彼が、船室に篭って波の音を聞いている、というのはまるで胎内環境だ。暗くて狭い部屋で、母なるものの鼓動を聞いている。
生まれ変われることを思わせる。
記事いじってて思ったけど、
琉花も空少年も、総体の指向、宿命をただ良しとせず、個として足掻くんだけど、
海少年はそれをただ受け入れちゃうんだよなー。女性性は受動性だから。
それにしても少年、男性型なんだし、少しは足掻け、生きようとしろ、と言いたいような気もした。
まぁ、大きなものと共に在る喜びとかな、 好きな人と両想いになったら、次にやることは繁殖、で合ってると言えば合ってるけどもだ。
海少年も葛藤のない、超越した感のあるキャラだ。
「魔女は考えない、ただ知っているのよ。自分自身のするべきことをね。」
ってやつだろうか。ミラ名言多過ぎだなー。言葉が輝いてる。
魔女のミラも自らの命を使うことに葛藤がない、超越してる。
でも、自分には似合わないカワイイ服を作るのが好きだったり、どこかチャーミングなんだよな。
海少年もアイス好きだけど…うーん。
映画で、もうちょい何か愛され要素をプラスしてあるといいなぁ。セリフじゃなくて表情とか仕草でもいいんだけど。
人間味や魅力は、コンプレックスとかギャップとか、アンバランスさで生まれると思う。
弱虫で気取り屋のハウルだから魅力的っていうアレだ。
琉花、琉球の花、ハイビスカス、イルカのルカ。
いくら意味があってもいいとか加奈子が言ってたけど、
そういやルカってそもそも男性名だなー。
聖ルカによる福音書、とかだろ?
男性の名前、王子様の名前、という意味も見ていいかも。
そういう男女のイメージが入れ替わっちゃった名前って色々あるよね。
千尋も、もとは男性名だ。
とか思ってググってたら、
ルカ、LU CAだと、全生物の共通の祖先型生命、とかいう生物学用語もあるww
なにそれすごいw五十嵐大介好きそうなやつww
全生物の祖先て。
進化の系統樹の一番根っこかぁ。
つまりあれか、パンスペルミア説でいう、隕石に含まれていたものか。
それが海に落ちて地球の生命になっていくと。
海少年と相性完璧な名前だな。
優れたクリエイターは、名というものの力を知ってるよなぁ。
一方で、アングラードの名前は良い意味でつけられてる気がしない。
前作SARUでアングレーム、アンゴルモアの大王、っていうのがあったからなぁ。
大王か。まぁ彼は尊大だよね。
王子様との対比にもなるかな。
水魔、アンゴルモアの大王、古都、古いもの、というニュアンスもあるのかな。
アングラードはどこか不吉だ。
誕生祭を台無しにしかねない危うさなんだろうな。
なにも焼き討ちにしなくてもいいだろうとは思うけど、不参加になるのはやむなし。
君の名は、では瀧と三葉の心と体が入れ替わってたけど、
海獣の子供でも、琉花と海少年で男女の役割の逆転がある。
男女の逆転、反転、入れ替わり。
これなんか大事なんだろうね。
釣り合ってぐるぐる回って和するためにかな。