ものがたりを解釈する

アニメ、漫画、小説、神話、あらゆるものが語りかけてくること。最も深遠な、でも誰にでも開かれている秘密に、解釈というメソッドで触れていく。

宮崎駿作品を通して解釈する1 赤毛、黒いリボン、魔女とは。

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さて、これについてはメアリと魔女の花ですご~く長い台詞でヒントをくれたから、気が付くことができた。
「この燃え上がるような赤い髪、古今東西赤毛の魔女は優秀と決まっています。すべての魔女の憧れ、天才だけが持てる髪の色です。」

長いwwしつこいww古今東西とまで言うwwなにかあるのかと流石に考えるわwww米林まじ親切ww駿信者レベルMAXww

以下の記事は米林昌宏レベルでなくとも、全作品の主要キャラとあらすじが頭に入ってる、ジブリ検定中級以上の人でないと情報量が多いかもしれない。

 

赤い髪、赤毛、というかオレンジ色の髪かな。かなり多くの作品に登場する。

ナウシカクシャナ、ドーラ、メイ、
魔女宅ではウルスラ、おソノさん、バーサ、コキリ、パイが嫌いな孫娘(というかキキ以外のほぼ全員赤毛w)
フィオ、ポニョ、
あとカリオストロの城クラリスや、未来少年コナンモンスリーもそうだ。

彼女たちの共通点はなんだろうか。

 

まず、空を飛ぶ力か、

それか異種と交流する力かな~、と思った。

ナウシカは蟲愛ずる姫
クシャナ巨神兵
メイはトトロ
ウルスラはカラス
フィオは豚のポルコ
ポニョ(お魚)はそうすけ(人間)

それぞれに異種族、異形、異なる世界のものと心を通わせる一種の異能、超常の力がある。

でもドーラはそうではない。魔女宅のバーサや孫娘もそれではわからない。

 

で、次に赤毛ヒロインと黒髪ヒロインがセットの時、黒髪のほうには人間のボーイフレンドがいるな~と思った。

モンスリーとラナなら、ラナにはコナンがいる。

ドーラとシータなら、シータにはパズーがいる。

メイとサツキなら、サツキにはカンタがいる。

ウルスラとキキなら、キキにはトンボがいる。

フィオとジーナなら、人間にもどったポルコはジーナのもとへ行く。


サン、千尋、ソフィ、菜穂子はちょっと置いとくとして、なんとなく間違いなさそうな手応えがある。

ちょいとググると、
ラピュタのドーラは、マ=ドーラという名前らしい。マドーラ、マドンナ、聖母、母。そういう名前だ。
三人の息子と多くの船員を連れてる、空賊ドーラ一家の船長だ。

三人の息子がルイ、シャルル、アンリ、30歳、25歳、20歳。
いい齢の大人なのに、あいつらママ、ママ~と言ってたな。

ははあ。なんとなく解った。子を自立させず従える母でもあるわけか。

 

若い娘の時は異なるものを受け入れる力、そして熟年になれば母の力、

つまり女性性の力。それが宮崎駿が描く、魔女の力だ。

 

時系列で考えよう、宮崎駿は同じことを二度はしない、テーマが展開していく軌跡があるはずだ。

クラリスは貴族の娘なのに、ルパンという盗賊を受け入れる。異なる世界、階級の違う者を受け入れる。

モンスリーはファルコン(隼)という飛行機で空を飛ぶ。
ナウシカ王蟲や蟲や腐海と心を通わせる。

しかし風の谷のナウシカでは、ナウシカクシャナの両方が赤毛だ。

ナウシカのほうにアスベルというボーイフレンドがいる。
クシャナナウシカアナグラム。同等の存在だ。異形の巨神兵に「薙ぎはらえ!」と命じることができる

トトロとラピュタでは赤毛と黒髪のヒロインの対比は例の通りで、


次の魔女の宅急便では、キキ以外のほぼすべての女性が赤毛だ。この意味は魔女宅の記事で詳しくするけど、
結論だけ先に言うと、女性が成長する段階のすべてを描こう、という意図があるようだ。 


で、次の紅の豚は、一転して男のロマンの話なので、赤毛と黒髪の対比、フィオとジーナも例の通り。

で、もののけ姫。サンは黒髪でボーイフレンドにアシタカがいる。エボシも黒髪だ。赤毛のヒロインは?

 

 

・・・・実は、アカジシのヤックルとシシ神が、オレンジ色なんだよねww

まさかのケモノがヒロインww

 

いやでも、これが考えれば考えるほどマジなんだな~。ヤックルはアカジシなのに人間のアシタカと心通わせてるし、
シシ神は、実はナウシカと同じ役割を担っている。
ここはもののけ姫の記事で詳しくしていくけど、ナウシカもののけ姫は一対、対称のような物語になっている。

 

で、次は千と千尋の神隠し。これにはもう、赤毛のヒロインが出てこない。もののけ姫まででやりきった感があったものと思われる。
ナウシカやアシタカのような英雄でなく、普通の女の子としてデザインされた千尋は茶色の髪で、魔女として登場する湯バーバは白髪だ。

で、次はハウルの動く城。これにも赤毛はなし。ソフィは魔女を越えた天使で、サリマンは白髪だ。

 

白髪の魔女、というのは、ヒイ様、湯バーバ、サリマン、などだ。
力を失った魔女か、あるいは失いつつある魔女、という意味がありそう。

 

ヒイ様はタタリ神を鎮めたとは言い難いし、 

湯バーバは恐ろしいけど、ゼニーバとの関係性や、使い魔の猫の不在、ハクを支配しきれなかったことなどから、
その力は衰えていると読むことができる。

サリマンも車椅子で、温室から出てこない。衰えてるから跡継ぎが必要なわけだしな。

 

で、次、ポニョは「素敵な赤毛」と言われる優秀で天才な魔女だw
お魚なのに、陸へあがってきて人間に恋をする。「そうすけ好き!」だ。
変身の魔法も使う。ガソリンの詰りも直すし、結界も張る、人魚姫であり魔女でもある。

 

また全作品中、唯一の赤毛の男性がフジモトだ。

人間をやめ、海=異界で暮らし、異種グランマンマーレと子供をつくっている。

魔女の条件は満たしとるw

あの濃い化粧や長髪は、道化であると同時に女装なのかもしれんwwww

 

グランマンマーレや荒地の魔女は、オレンジというよりピンク系の髪をしている。
なんかちょっと魔女とは違うんだろうな。荒地の魔女は更に声優に男性(?)を起用してるし、
グランマンマーレは魔女以上の女神で審判の天使だからかな。

 

で、風立ちぬでも赤毛はなし。あれは女性性でなく、父性がテーマになっている。
ここまですべて、女性性がメインの物語を描いて描いて描いて、描き終わってしまって、
ようやくそれを描く時が来たんだと思う。なかなかに根深いものがあるよな~。
それは風立ちぬの記事で書こう。

 

あ、あとパンダコパンダのミミコもオレンジ色の髪、赤毛だ。パンダと家族になっちゃう。

ほんと最初から宮崎駿のなかで謎の確信がある設定らしいな…。


まぁ、それでだ。

赤毛は魔女。魔女の力は異種と交わる力、女性性の力、女神の力。間違いないんじゃないかな。

女性性ってなにか、については太母とかアニマ、象徴とか原理、神話学とか心理学の話になってくる。

女、母、海、地、夜、右、水、陰、闇、受動性、無意識領域、魔法。対になるものの片方。

 

大地や海である母性が異種を受け容れるというなら、その対になる相手は天空だ。

 

だから宮崎駿の魔女の魔法は、空を飛ぶことが主になるんだろう。

 

ま、それもジョーゼフ・キャンベルや河合隼雄を引用しつつぼちぼちやっていく。
あと、ジェンダーフェミニズムとは違うから、そこんとこ混同は注意して下さい。

 

赤毛のサブアイテムとして、黒いリボンや、赤い石のイヤリングや指輪、首飾り、赤い服、なんかもある。

フィオやソフィの帽子のリボンは黒、
逆に黒髪のキキには赤いリボン、
サリマンの服は真っ赤、
グランマンマーレには赤い首飾り、
アシタカの赤い頭巾とか、ハウルの赤い指輪とか。

それらにも赤毛ほどではないが魔女、魔法的な意味がある。

 

そもそも、なんで赤なんだろうね?

古来から、赤、朱、丹、などは魔除けの色ではある。血、生命力の色、太陽の色、呪術・魔法に重要な色だ。

慶事にも弔事にも小豆を入れて赤い飯を炊く。赤ちゃんの顔は赤くて、死者や病人の顔は青い。
民俗学だとそんな感じで、

陰陽論では白黒赤青、白と赤が陽を示す。女性性は陰、黒青だ。

女、陰、黒、青の属性のものが、赤を身に付けると、それは足りないものを補うということであり、完全性をあらわす。
とか?

 

もっと普通に考えて、欧米では赤毛は偏見の対象だ。

赤毛のアンでもそう。赤毛は裏切り者とか魔女とか、そういうイメージがあるものらしい。赤毛というだけで魔女狩りの対象になったという。

悪魔と契約する、というのが異種と交流するという解釈になっていったのかな。

 

 

ちなみに米林監督のアリエッティ赤毛で、小人なのに人間と心を通わせる。この設定通りだ。

そして、メアリだが。メアリに登場する異種といえばフラナガンだが、どうもなんていうか、心が通ってはいないよねww
全然話が噛みあわない。アリスのお茶会のメンバーのように、受け答えが頓珍漢だ。
キキとジジのように、黒猫ティブの言葉がわかるわけでもない。

 

これは多分「一日限りの魔女」だからだ。メアリは赤毛なのに魔女ではない。
米林監督は、宮崎駿の世界観を深く理解し、それを使ってメアリをこういうキャラにしたってことは、
それはやっぱり、これからは師とは違うことをしますよっていう意志表明だと思うよ。うん。

 

さて、次の記事は猫の話だ。

 

 

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