メアリと魔女の花のセリフ「猫は魔法に精通している」
これもジブリ全体を通して超重要だ。
宮崎駿作品で猫というと、猫バス、ジジ。
あとは耳をすませばのムーン、バロン、猫の恩返しも金ローで見たな。
フラナガンによると黒い毛並み、緑の目の猫は完璧な使い魔で、
ジジは、カラスは魔女の召使いだったのにさ。と言ってた。
猫の恩返しでも猫の次にカラスが重要な動物だ。
魔女と使い魔、マスコット(護符)という構図で見ると、
ナウシカとテト、キキとジジ、ウルスラとカラス、湯バーバに頭と湯バード、サリマンにヒン、ソフィにヒン、って感じかな。
注目して面白いのは、湯バーバだ。
湯バーバは魔女、で、油屋の従業員は蛙男に蛞蝓女、釜ジイが蜘蛛で、リンはイタチ?ハクは子どもの竜、蛇に似ている。湯バードはカラスだ。
カエル、ナメクジ、クモ、ヘビ、カラス。
トトロのオープニング、さんぽに描かれているような魔女の眷属が揃ってる。
暗がりにいる小動物って感じだろうか。カラスはちょっと別枠だけど。
あと坊がネズミでイモリの黒焼きも出てくる。ハエドリは虫系、フルコンプ感あるな。
しかし、魔女のベストパートナーである猫が登場しない。
カラスと一緒にいるのは、頭、かしら、緑色のおっさんの頭が3つ転がる奇妙なモノだ。
なんだあれ。飛頭蛮か?そんな唐突な妖怪の採用はないだろうよ。
あの三つの頭の跳ねて転がる動き、ウチの猫が喜んでじゃれかかりそうだと思う。
猫の好きな動きだけがあって猫がいない。
つまりあれは、猫が不在ですよっていう強調なんでないかな~。
湯バーバはゼニーバと二人に分裂している不完全な存在だ。猫を連れていないのもその不完全さのあらわれだろう。だいたい竜は蛇じゃないしな。
詳しくは千と千尋の記事にまとめていこう。
「猫の道」とでも言うべき設定の存在を感じる。
ムーン、ムタは、人が通るところも通らないようなところもどんどん進んでいく。
植え込みの下、塀の上、民家の間、庇の上、建物の隙間、細道。そしてそれは時に異なる世界に通じている。
これは、リアルに猫を観察してても思うよな。
人のテリトリーの意識は、猫には関係ないし、体が小さくて身も軽い。人が入れないところを立体交差で進んでいく。
追いかけようとしてもそうはいかなくて、でも気が付くと見えるところにいたりする。
猫は、人とは異なる通り道、地図を持っている。
猫の通り道は異世界に通じている。猫はあの世とこの世を行き来する。
観察からそういう設定が生まれてるんだと思う。だからなんとなくそういうものかもな、と思える。
猫バスの短編で、めいとこねこバス、というのがあるらしい。
ねこばあちゃんバスの行先は「風浄土」とあり、あの世とこの世を行き来するバスであるという。
トトロ本編でも、猫バスは普通の人の目には写らない、風として描写される。
「道を間違えて」迷子になったメイ、お地蔵さんの隣に座って、ばあちゃんがお経を唱えて、不吉な神隠しになっていたメイを連れて帰ってこれるのは、猫バスだけだったはずだ。
これはトトロの記事で詳しくする。
で、猫の恩返しではバロンの事務所や猫の国に通じる猫だけの道がある。
そのへんを踏まえて、メアリと魔女の花のティブとギブに注目すると面白い。
メアリにはティブの言葉がわからないけど、
ティブは人の言葉がわかってるし、魔法のことも異世界のこともよ~くわかってる。
そういう風に読み取れる。
メアリはティブにこう話しかける。
「あんたも災難ね、黒猫なんかに生まれて。私もこんな赤毛の縮れ毛、 おまけに失敗ばかり、ランチを食べる友達もいない」
ティブは、赤毛も黒猫も魔法の世界では重要で価値があるものと知っている。
そしてランチを一緒に食べたメアリと友達になってあげることにした。
だから落ち込んでいるメアリを秘密の場所、魔法の気配が濃く残る特別な場所へ案内する。
魔女の花、夜間飛行が咲く場所だ。
冒頭でシャーロットと共に落ちてきたあの花は、周りの木や鳥、生物を急成長させる。
が、それは時間や生命力を一気に先取りしているだけで、代償、反動がある。
だからメアリが最初に行ったとき、あの場所のすべては枯れ果てている。
魔法とはそういうものだ。
で、あの場所であの花は7年おきにそのサイクルをくりかえしていたのか、
それとも夜間飛行の株が一揃いあって、咲いて枯れるだけならそこまでのことは起きないのかも。
発芽するとき、周囲から魔力を一気に引き出して吸い取って溜め込んでるとか、そういう花なんじゃないかな。シャーロットも魔力を失ってるし。
花が摘まれなければ、溜め込んでる魔力を循環させるだけで済むとか。
ティブとギブは、7歳にはなってない猫なんでないかなー。
あの場所になにか魔法の気配があるのは知ってたけど、花が咲くことは知らなかった。
だから、メアリを案内したけど、花を見つけて、なんかあれヤベェ!となって威嚇する。
メアリが花をひとつ摘んで、なにかのバランスが崩れてしまう。
そして霧が発生して、エンドワ大学のある異世界、魔法のある世界と繋がってしまう。
で、霧の中で、ギブがさらわれて、ティブは命からがらメアリの部屋に逃げてくる。
そして、翌朝、ティブはいない。どこへ行ってたのか?
もちろんギブを助け出しに行っていたはずだ。
エンドワ大学は空の上だが、空は飛べなくても、
猫の道を通っていける。はずなんだな。
しかしここで「不法侵入者は変身の刑に処す」というやつがある。
あれ、変な設定だよね。強調されてるわりにピーターが変身の実験台にされるのは、マダム達が誘拐したせいであって不法侵入じゃないし。
捕まってた他の動物だってそうだ。不法侵入したものはいない。
だから、あれはティブが一匹では大学に入れず、引き返してきたんだと気が付くための伏線だ。
ティブはギブを救うため、メアリを新入生に仕立てて合法的に大学へ入ることにする。
森の入り口でメアリを待って、箒のところへ案内して花を渡す。
ティブに注目していると、喋りこそしないが、かなり雄弁だ。
褒められれば胸を張ってドヤってるし、呆れればそういう顔をするし、警戒すればしっぽが膨らむ。
ギブが捕まってるところの前で、とびだして行こうとするし、
メアリが大学から帰ろうとすると、大学の方を向いて座り、まだ用は済んでいないとアピールする。
真っ黒い毛並み、エメラルドのような緑の目、魔法に精通してる完璧な使い魔、それがティブだ。
しかし、惜しいことに、赤毛のメアリが「一日だけの魔女」偽物の魔女なんだな。
言葉がわかれば、どんだけティブが出来る子だったかという話だけど、
メアリとティブは友達であって、魔女と使い魔じゃない。
米林監督のジブリ愛パネェ。で同時に、もうそれはやらないんだ。と表明している。
「猫というやつは誰のものにもなりゃせんがね」と庭師のゼペディが言うけど、
その通りだ。猫を眷属にできるなら、魔女ということになるらしい。
なんでそうまで猫が特別なのか。
まぁ魔女と猫がペアなのは伝統的なモチーフで、ジブリに限ったことでもない。
黒猫は洋の東西を問わずジンクスが多い。
黒猫が道を横切ったら不運とか、
黒猫は結婚のお守りとか、福猫とか。
夜闇に紛れて目だけが光るのは、印象的な図像だ。キャッツのポスターとか。
キャッツ良いよね。DVD持ってる。
ベルギーの猫祭りの由来は魔女狩りから…いや胸クソだからその話はよそう。
犬と猫はどちらも人間と縁の深い動物で、どちらもその技能が役にたつ存在で、食用の家畜とは扱いがちょっと違う。
犬は陽、猫は陰、人の意識の中でそういう対照が形成される。それは普遍性を備える。
宮沢賢治の注文の多い料理店のように、人を食う山猫とそれを追い払う白い猟犬のような対照にもなるし、
ペローの長靴を履いた猫のように、人の無意識領域のガイドが猫の姿になることもある。
ドラえもんもそうだ。あれは少年に寄り添う不思議な猫なわけで。
猫と女性性は、象徴的にとても近いところにある。
美少女に猫耳つけて萌えーとかやってるのも理に適ってはいるわけだw
猫耳キャラで好きなのは、シャミー1000とーブラック羽川とーあずにゃんとーシアンとーサーバルちゃんとーイヅツミとー、にゃん太班長とーアプロとー、やっぱ猫バスとジジとバロン。バロンは恋人の猫も美しい…。
しかし、
赤毛といい猫といい、宮崎駿はほぼ最初から一貫した世界観を持ってるよな。謎の確信だ。でもインスピレーションってそういうものかもなぁ。