ものがたりを解釈する

アニメ、漫画、小説、神話、あらゆるものが語りかけてくること。最も深遠な、でも誰にでも開かれている秘密に、解釈というメソッドで触れていく。

転生したらスライムだった件を解釈する。優しい魔王の物語。

 

転生したらスライムだった展 大抽選会 当たり ポスター リムル ミリム 転生したらスライムだった件

 

転スラもyoutubeで期間限定無料配信!ウオーヨッシャー!

 

https://youtu.be/HurtjqboeV4

 

これとオーバーロードもそうなんだけど、最近流行りの、魔王が主人公の物語だ。

父性存在が自分の眷属、王国を獲得していく物語だ。

宮崎駿が逆立ちしても絶対描けない、

父性とはどんなものかという理解に最適なので、この機に書いておこう。

 

というか、純粋に面白くてハマる。

スライムのぽよぽよ弾む動きがもうアニメとして見てて楽しい。

人物の内面の描写から、作者の懐の深さがうかがえて癒される。本質的な許しの感覚が描かれる。みんなイイやつの優しい世界だ。

・・・少なくともアニメ化されたところまではw

 

さて、転スラの導入はいわゆる、なろう系の異世界転生モノだ。

主人公は現代社会でゼネコン勤務の会社員、37歳男性童貞。

 

転生によってチート能力を持ったスライムの姿になるけど、

メンタルが、社会で働いた経験のある、ちゃんとした大人であることが重要だ。

オーバーロードもここの設定がほぼ一緒なんだよね。

 

いわゆる少年漫画やラノベの主人公というのは、ほぼ十代の少年だ。

彼らは勇者であり、王様の命を受けて、冒険の旅に出て、魔王を倒す。

 

十代の少年が、父親にどう生きるべきかを学び、家庭の外の社会で自分の力を試し、父親を精神的に越えて自立する。

そういうイニシエーション、心理的な成長の段階が、物語の形になっているわけだ。

 

さて、そこで。

37歳の成人した男性を主人公に据えると、魔王となり眷属を従え、勢力圏を拡大する物語になる。

 

自分の能力で生きていけるようになった男性が、

配偶者を得て子を増やし、あるいは部下を雇って育成していく。

そうやって家庭や会社、自分が舵取りをする集団を繁栄させていく、そういう心理的な成長の段階が、物語の形になっているわけだ。

 

スライムのリムルは、実に寛容かつ鷹揚、理想的な上司の性格をしてると思う。

 

リムルの姿はぷるぷるでまんまるのスライムと、

水色の髪の、中性的な十代の美形バージョンがある。スライムなので無性体らしい。

王、魔王、上司、社長、首領、リーダー、父権としてはそぐわない、意外なデザインで、そこがウケるんだろうな~と思う。

オーバーロードも骸骨の魔王な外見だし。

やっぱ、主人公が厳ついオッサンだと映像的につまんないのかな。中身も見た目もオッサンじゃ当たり前過ぎるし。

中身が成人男性で、見た目が球体や美少年や骸骨という、ギャップが面白いんだと思う。

見た目は子供、頭脳は大人名探偵コナンもそうだけど、ギャップというのはそれだけでドラマになる。

 

転生したらスライムだった件 「リムル=テンペスト」 塗装済み完成品フィギュア

魔物の盟主、リムル・テンペスト

 

Furyu Overlord: Ainz Ooal Gown 1: 7 スケール PVC フィギュア マルチカラー

オーバーロード、アインズ・ウール・ゴウン

 

・・・最近のフィギュアってめっちゃよく出来てるよな。ほ、欲しい・・・。

リムルの足元が半透明なのほんと良く出来てる。スライムから変身しました感でてる。

スタッフオブアインズウールゴウンのデザインまじ立体で映える。カッコイイ。

 

あ~。欲しい~。

いやいやいや。

で、

 

転生したリムルが、異世界でイチからどうやってのし上がっていくのかというと、

まず暴風龍ヴェルドラっていう、広大な土地に加護を与えてて、知名度高くて畏れられてて、洞窟に封印されている高位な存在と、友情を結び、同格として一体化する。

捕食者というスキルで飲み込んで、スライムの体内の異空間に保持する。

 

ここで一気に成人男性の持つ能力とか、積み上げた経験値、築いた地位や権威、そういうもののメタファーをゲットしている。

少年期~青年期でそういうものを得ていく過程の短縮というか、話をてっとり早くするナイスな設定だ。

 

オバロだと、地下大墳墓というゲームの基地拠点ごと異世界へワープしてて、NPCが最初から忠誠度MAXで仕えてくれてる。

 

暴風龍との一体化は、もうひとつ大事な設定のチュートリアルでもある。

名前をつける、だ。

転スラではこの名づけ、というのがずーっと重要なものとして描かれる。

 

 父親なら子どもと血を分けた仲で、師匠なら弟子に技能を教え、雇用主なら従業員に給料を払って、

そういう繋がりをもって、親子や師弟や主従の関係となるわけだが、

 

リムルは、魔物に名を与えることで係累、眷属としていく。

 

ゴッドファーザー、名づけ親となって、魔物たちを子供のような存在として受け入れていく。

洗礼の代父、ゴッドファーザーってのは、名をつけた子どもに相応の責任を負う、親に次ぐ後見人みたいな人だ。人望のある立派な人が頼まれることだ。そういう文化的背景がある。

風の谷のナウシカでも、風の谷の母子が、ユパに「この子に名前をつけて下さい」とお願いしにくるところがあるけど、

それだけで旅人のユパが風の谷でよっぽど尊敬され信頼されている人物なんだなーと分かる、そういう場面になっている。

 

転スラの世界では、基本的に魔物には名前がない。

言語があるのに個々に固有名詞をつけないってのも妙な話だが、

名づけにはそれなり以上の魔素、生命力、精神力のようなものが代償として必要であり、

またそれは一種の関係性を結ぶ契約であることも読み取れる。

オーガ達は名を貰う相手を選ぶ。自分の上に立つ者に相応の格を求める。

 

敵役の魔神ゲルミュッドも魔物に名を与える時「私を父と思え」と言う。

それはただの話し言葉ではない。催眠暗示のようなものだ。

名とともに精神に刻まれる強固な契約で、呪で、力ある言葉だ。

 

異世界に限らず、本来、名というものは、そういうものであるとも言える。

現代では忘れられがちで、形骸化してしまったけれど。

あるともないともわからない、すべてが流転する世界で、

ある事象を、認識し、定義し、固定する。

移ろうはずのものをとどめ、輪郭をひく。それが名をつけるということだ。

それは人の知がもつ本質的な力で、魔法だと思う。

 

生きているとも死んでいるともつかないシュレーディンガーの猫、

粒とも波とも定まらない不確定性原理を、確定する。それが観測のもつちからだ。

名の作用、名の魔力はここに起因する。

 

 

・・・いや、名じゃなくて、父性の話がしたいんだったっけ。

 

異世界の魔物たち、最初はゴブリンの集落が登場するんだけど。

文明レベルが低い。掘っ立て小屋と柵があるだけだ。

現代社会でゼネコン勤務だったリムルは、まずは衣食住の向上という指針を示す。

集団の目指すべき指針を示すのが、父性、リーダーの仕事だ。

ドワーフの技術者を招いて、上下水道から田畑から街道から、文化的生活を整備していく。

 

そう、技術者を招くという発想。これがアニメでは珍しい。

 

リムルの基本的な姿勢は、自分でやるより、人に任せる。だ。

できる人を探してきて、係累に加えて、任せる。

ここが十代の主人公と違うところだ。十代だったらまずは自分でやってみるだろう。

三十代では、技能の獲得の段階から、監督する立場に移行する。

 

そして、起きたことを「俺が引き受ける」で責任を背負う。

 

そんでリムルは放任主義だ。任せた人の自主性を寛容に見守る。

部下にしたベニマルや秘書のシオンが、主のリムルの前にずずいっと出てきて相手と交渉を始めても、諌めることなく成り行きを眺める。

で、色々予想外が起きても顔には出さず、最後に、まあいいか、で引き受ける。

 

そんなイイ上司見たことありますか・・・?

 

そんな感じなので、部下たちはのびのび育つ。

ゴブリンのゴブ太がどんどん力をつけていく描写があるけど、

リムルはその成長を見て驚く。

ゴブ太がガビルに勝った時、本当に意外そうで、ランガやベニマル達の方がゴブ太の実力を知っていた。

 

つまり、リムルはゴブ太が努力してるとこは特に見てないんだな。何か教えたりもしてない。

中間管理職のゴブリンロードや技能者達とか、役職のあるものが役割を果たしてるか、大きな流れが滞りないかを見てて、子供ひとりひとりとかの細部はあんまり見てない。

 

環境を整えて人材を揃えてたら、伸びる子は勝手に伸びていく、あらわれた結果を見て評価する。そんな感じだ。

それが父性の子育てでもある。

濃やかなマンツーマンは母性的な子育てだ。赤ちゃんはそうでないと育たないからな。

 

指針を示し、人材を登用し、その自主性に任せ、責任は負う。

 

そのやり方で、リムルの国はどんどん大きくなっていく。

快い父性の自己実現だ。アニメではだいたいそこがメインなので楽しい。

 

 

転スラはまだ原作が続いてるので、終わり方まで観てからまた解釈できたらな~と思う。

父性がいかに危機に陥り、そこを越えるのかとか、興味あるところだ。

周囲の国家や勢力との軋轢もそうだけど、

リムルの係累、王国の中から、独立する者や、魔王を倒す勇者が出てくるかどうかとか注目したい。

 

ただ、そうだな。

オーバーロードは魔王としてのバッドエンディング路線らしいんだが、

転スラは更なる昇華を見せてくれる物語に成り得る、と思うポイントがある。

 

命題の設定に素晴らしい秘密がある。

命題が正しければ、正解に辿りつける。

真に正しい命題は、答えそのものですらある。

そういうものだと思う。(夢枕獏上弦の月を喰らう獅子より)

 

オープニングやエンディングで、

名も無い物語を拓け とか 物語が今始まった名前を宿して とか 許しあうことの答えになる僕ら とか、そういうフレーズがあって。

この曲は原作のマインドを大事にしてると解るんだけど。

 

そう、転スラには、名前をつける、ということと、許しあう、というふたつのテーマがある。

 

リムルはとても鷹揚だし、そもそも争いは好まないが、

その鷹揚さ、優しさ、慈悲深さ、懐の深さは、敵対することになった者にも発揮される。

 

20万の大軍勢を率いて森を蹂躙するオークロードとの対決が、アニメ14話付近のハイライトだが、

リムルは、飢えるオークの魔王を、まるごと呑み込む。

スライムなので比喩でなく、張り付いて消化して取り込む。

肉体のみならず、その存在のすべてを、だ。

 

心象風景の場面になって、

オークロードもまた父、主、族長として飢饉から一族を救う決断をした過程が描かれ、

長は一族の飢える子たちのため、諦められず抵抗を続ける。

 

リムルは、起きたことの責任として、オークロードには死を求めるが、

彼が守ろうとした者すべては、自分が引き受け守るから、安心しろ。と言う。

 

ひび割れた荒野だった心象は、リムルを中心に豊かな草原と森に塗り替わり、

オークロードは、「飢えは、満たされた。」と言って、リムルに取り込まれる。

 

「飢えは、満たされた。」だよ・・・?

 

それは真に救われた感覚の言葉だ。アニメで思わず涙ぐむこと請け合い。

オークの軍勢はイナゴの群れのように、底なしの飢えに突き動かされる餓鬼の軍だった。

森も魔物も同胞もなにもかも、食い尽くしてなお飢える、地獄が広がるだけの行軍は、許されることで終わる。

 

飢え、という苦しい衝動から解放される。思い込みをリリースする。

 

 

 

名をつける、ということが、無限を仮に確定して有限へ引きだすことなら、

許す、ということは、こんがらがった有限の事象をほどき、無へ回帰させることだ。

 

名をつける、が空即是色で、

許す、が色即是空だ。

 

このふたつを、同時に行使できるとなると、物語がどうなるか。

答えは、どんどん次元が上昇する、だ。

 

プラスとマイナス、陰陽、有と無、左右、対になる原理の双翼が揃えば、どこまでも高く飛翔できる。

 

例えば、リムルの演算スキル「大賢者」は、それだけでも大概チートで万能なスキルなのに、

智慧之王(ラファエル)」そして「神智核(マナス)」と、どんどん統合進化する。

思考加速100万倍とか、量子コンピュータを凌駕するとか、

もうなんか凄過ぎて、そんなんどう使ったらいいのか想像もつかないよーなレベルだが、

大賢者以外のスキルや、他キャラのレベルアップもそんな感じで、さくさく進む。

ラファエルとベルゼビュート、天使と悪魔の両翼のスキルでリムルは飛翔する。

 

どこまで彼らのレベルが上昇するのか、

あるいは異世界の殻をくぐり、無限を見出すことができるかもしれない。

 

深淵、無限、0、空、混元、アルケー、カオス、根源、「  」 そして愛や許し。

 

それは決して言葉にはならないなにかだが、

それでもそれをどんな言葉で表現してくれるか、とても楽しみだ。

 

 

 

 

 

 

転スラは当然リムル推しだが、鬼族のキャラのバランスの良さもアニメ映えする。

リーダーの赤、クールな青、ピンクが少女で、紫が脳筋怪力巨乳で、白が剣技の老師とか、最高~。オープニング見てて目が楽しい~。

序盤だけだが狼の作画もとてもイイ。わんわん最高。

 

ただしアニメのラスト、テメーはダメだ・・・。

やり直しを要求する。二期か劇場でカモン。

 

 

 

部下の皆さんと一緒にアインズ様マンセーするの楽しい。

部下の皆さんの悪い顔芸が楽しい。

オバロはもっと、人の醜さ、狡さ、残酷さを描くダークさがある。

人間不信になりそうなところを、アインズ様のひとりコントが和ませてくれる。

そんな面白さだ。

 

最近ここからまだまだ続編が出てたことを知る。

一時期、脱オタしようとかラノベは卒業と思って本屋でコーナーに近寄らなかったからな~。

 

 

・・・、しかし、できることならどの物語も、もうちょっとコンパクトにまとまらないものだろうか。

優しい物語なのに、お財布に優しくないよぉ・・・。

 

 

追記

この記事書き終わってから、小説家になろうサイトの転スラ一気読みしました。

いやー面白かった。

 

まさか天使と悪魔を統合進化して、虚空之神(アザトース)まで行くとはww

 

神話の主神クラスまで上り詰め(しかもクトゥルフw)、神様まで倒してしまうとはww

 

時間と空間が交わり果てるところまで至って、そして帰ってきて。

番外編では異世界まで行っちゃってたww

 

なろう版の解釈もまとめて記事にできそうなくらい内容があって面白かった。