というわけで早速視聴、徒然に書きはじめてみる。
一作目の化猫はオムニバス企画のなかのひとつに過ぎなかったのが、
あまりにビジュアルが素晴らしかったので、後にモノノ怪シリーズが制作されることになったのだとか。
漫画雑誌とかではよくある話だよね。
読み切りのつもりがバズったから連載企画になる、みたいな。
アニメオリジナルでは珍しい成り行きだけど。
そんなわけで、化猫では薬売りの髪質がややストレートだったり、
オープニングがいかにもなサイケデリック模様だったり、
台所の3Dオブジェクトがもろ素材で低予算感だったり、
モノノ怪シリーズほどビジュアルが定まってない感を楽しむのも乙なものだ。
あらすじは、まあ。
とんでもねえ悪代官が花嫁行列から花嫁をさらって、
座敷牢で監禁虐待死させたのを、一族郎党で幇助と隠蔽。
あまりの所業に、花嫁が隠していた猫が祟って皆殺し。
三行でざっくり言うとそんだけの話ではあるが、
隠蔽された事実が証言で少しずつ暴かれていくサスペンス感や、
不可視の化猫がひたひた迫るホラーな演出、
なにより他に類を見ない独特な美術に、何度見てもずっと目が釘付けで、処理能力が飽和状態なので、
筋書きも追いつくだけで精いっぱいっていうビジーな感じマジ最高。
で。
なにか新しいことに気がつかないかな~と思って観てたから、
真央、という名前が気になった。
マオ、中国語で猫のことだね!
マオは坂井家の娘。諸悪の根源の悪代官の孫娘。
拉致虐待殺人から25年経った、マオの輿入れの日に化猫騒動が起こる。
25年。
怒り恨んでいるのに、それだけの長い間復讐を待ったのはなぜなのか?
作中で「この家から花嫁が出ていくことが許せなかったんだろう」と、
一応納得できるセリフがあることはあるのだが・・・。
化猫は、原作なしのオリジナルシナリオではあるけど、
鍋島の化け猫伝説からモチーフをとっているのは伺える。
つまるところ、女主人の仇討ちをする猫、だ。
子どもの頃、なにかの漫画で読んだのだが、
「猫や、仇を討っておくれ」と言い遺して懐刀で自害する奥方、
その血を舐めて飼い猫が化け猫に変じる場面がうっすらトラウマ・・・。
台所で油がこぼれている場面があるが、それは猫が舐めたのだ。
魚を絞った生臭い油を安価な灯りとして使い、それを猫が舐める。
女に化けて潜む化け猫だが、それで正体がバレるっていうアレ。
そう、化猫は、
女に化けて潜む。
マオ。
孫娘のマオは、猫だった?
いつから?
まさか25年間、ずっと・・・?
ゾッとした。
そう思ってみたら、
最初の犠牲者であるマオの遺体が、
さらわれた花嫁タマキの顔に変わって口裂け笑いを浮かべ、
赤い爪を長く伸ばして薬売りの足首を掴む、あの場面の意味が変わって見えてくるね!
死んだ花嫁マオに猫が憑いたのかと思ったけど、そうではなく。
マオ=猫だったのだ。25年きっとずっと。
そうだ。
化猫は、花嫁の仇を討つ。
監禁を知っていながら見殺しにした使用人や嫁いできた奥方、
粗末な食事を運び蔑んできた女中、死体を井戸に捨てた家臣、強姦した長男。
加害者はみんな食い殺して、吐き出して壁に塗りたくってやった。
罪の重い者ほど後に残して、たっぷりと恐怖する時間を与えてやった。
ただ、最初の犠牲者であるマオは、花嫁の仇ではない。
花嫁の死後に生まれたんだもんな。
だから、マオを殺すことには復讐の正当性が無い。
モノノ怪の理(ことわり)は人に理解できるものとは限らないから、
係累というだけで同罪として殺すこともあるかもしれないが。
しかし、そうだ。
ただの猫が化猫に変じるためには、なにか代償やエネルギー源が要る。
鍋島の化猫は恨みの篭もった女の血を舐めたが、
花嫁タマキは猫に「お逃げ」と言ったのだ。
復讐の代行を頼んだりしていない。
猫は、花嫁と母猫も殺されているので、
自発的に復讐を決心するのもわかるが、
生まれて数年の猫には、そこまでの力が無かった。
だから、その家の娘に成り代わり、25年をかけて力を蓄えたのではないかな・・・。
成人は無理でも胎児に憑くとか、それくらいならできたのかもしれない。
主犯の孫娘といいながら、主犯は息子の嫁にも手を付けてたから、娘かもしれんし。
25年は猫の平均寿命を大きく越えてる。化け猫と呼ばれるには十分な年月だ。
あるいは、それだけの時間をかけて見極めていたのかもしれない。
家人が悔い改めたなら、花嫁を弔ったなら、なにか善行を積んだなら、
恨みは薄れたのかもしれなかったが。
それどころか、猫を20匹ばかり買って刀の試し切りにするとか、ろくでもない悪行を積むばかりだったからなー。
しかもその猫の死体、花嫁と同じ井戸に捨ててそう。
怨念が積もり積もってゆくばかりの25年だ。
ただの猫が、七人ばかり祟り殺して家を断絶させるモノノ怪になるに十分な因縁というもの。
輿入れの日、タマキと同じ花嫁衣裳という最後のピースを得て、そこで化猫マオは完成した。
冒頭の花嫁マオの頓死は単に死んだフリか。
25年体を動かしていた中身が化猫に変化して抜け、抜け殻となったのか。
モノノ怪の理(ことわり)は、
恐怖を除いてあるがまま観てみれば、
因果応報等価交換、やられたぶんだけやりかえす。
オーバーキルなんてことは無く、人のする支配や暴力よりよほど道理にかなってる。
・・・のかもしれない。
だから、あんなにキレイさっぱり清め払われて逝けるのかもね。
いや、あくまで解釈だけどね!
コミカライズで前日譚があるらしいが未読なので、的外れだったら恥ずかしいが、
二次妄想として楽しめたっていうことで。
しかし、深読みしても納得できる筋書きだけでも素晴らしいけど、
ほんっと美術が凄いのだ。
日光東照宮もびっくりのハデな屋敷の、屏風絵ひとつとっても舞台装置として機能している。
手前の座敷は畳ナシの板間と鶏の絵で身分が低いものが控える感じ、
四間続きの奥の座敷に行くほど金がかかった感じになっていく上に、
二の間で家臣の勝山と笹岡が言い争う背景の屏風は犬と猿、犬猿の仲だったり。
三の間の奥方の背景には華美な扇柄の天井や、マオの亡骸の背景には散った花。
そして主犯の隠居の四の間には冬景色と鶴。
・・・鶴?
で、その鶴は、仕掛け扉になっていて、隠し座敷に続く。
「決して覗いてはいけませんよ」の鶴の恩返し、
河合隼雄的な、民俗な心理学でいうところの「開かずの間」か。
地下へ降りる階段があるのは、ラビットホールや異界、根の国や黄泉、深層心理へと降下する装置。
そして隠し座敷は、暗く篭った劣悪な座敷牢であるはずのところが、
豪華を通り越して神社仏閣レベルの荘厳な装飾、
六色の竜の柱が支える広大な六角形の空間になっている。
壁画は海中でまるで竜宮城だ。
地下と女、女と猫、女と海、海と無意識、海は常世、という象徴の連想は解るんだけど、
それでもあそこまで非現実的な荘厳さになるのはすごい発想だわ・・・。
竜宮城とすれば花嫁は乙姫、そして最期に白髪の老人が家族を失いひとり取り残されるオチは浦島太郎ってことだろうか。
竜宮城では時間の流れが違うのもあるな。
浦島太郎がはるか先の時間に放り出されたように、
あれだけの化猫騒動のあいだ、屋敷の外ではほとんど時間が経っていなかった。
乙姫は美しく浦島太郎をもてなすが、
開ければ年をとる玉手箱、呪いのアイテムともとれる箱を土産に渡す意味わからん悪女という見方もできる。
主犯の隠居は、誘拐した花嫁が自分を誘惑し厚遇したとか、この期に及んで意味わからん嘘をつく狂悪と思っていたが、
あの奥座敷が竜宮城であったなら、
あのあまりに荘厳な龍の柱は単なる飾りではなく、なにか意味のある結界のような魔法陣のような呪術の装置であったとしたら。
あれは、矛盾する現実を両立させ、生贄を欲するアヤカシの間であったのかもしれない。
・・・知らんけど。
ヘビーな見心地の本編を涙で洗い流してくれるエンディング、
猫視点になって歌詞を理解するとぴったりくる。
空を埋める花の色 うつりにけりなわが恋
やがて全てが過ぎ去る後も貴方だけを想う
いつか春の夕まぐれ 初めて口づけした
幻のような香りの中で貴方だけを想う
あなたの胸にこの身を任せ 私は死んでゆこう
ネコ・・・おま・・・おお・・・もう・・・(TロT)
劇場版を見に行くまで死ねない。
薬売りはCV櫻井孝宏でしかありえねえ。櫻井孝宏でしかない節回しが世界観にすごい貢献してる。
…と、思ってるけど、
キャスト変更きちゃったなぁ…。
しゃーないけど、他の誰に務まるというのか…。
声質もだけど、抑揚とか節回しの良さなんだよなぁ…。
いっそ声優畑じゃなくて舞台俳優とかから募るか?
中村監督、10種体癖っぽいな。
横に開く力を感じる体形。頭脳型との見分けは首の短かさ。
忘れっぽいらしいw10種は監督に向くだろうな。個性を伸ばしてやれる親の気質、
しかし一方で支配が強いから、クリエイターとか独立心のある人は従うのがキツイかも。