flow
黒猫が主人公の3D映画!
水没した世界を船でフローする物語!
観てきた!
すごく良かった~
『Flow』は2024年公開の3DCGアニメーション冒険映画。
ラトビア・フランス・ベルギー制作。
制作費350万ユーロで制作された低予算インディペンデント映画。
オープンソースのソフトかつ低予算での制作ということで
映像的には15年前でもこんくらいは見たなという感じではあった。
ピクサーの毛並みの一本一本まで見える動物がヌルヌル動く映画を見慣れてると、
3Dのリアルさはすごいわけではないのだが、
水没した遺跡のエモさとか、光の滲む柔らかさとか、猫の目がずっとぼんやり光ってるとことか、
そして一切のセリフや説明が無くて、
動物たちの動きから感情やストーリーを視聴者が能動的に読み取っていくことから生じる没入感というのは、
ICOやワンダと巨像、トリコ、風ノ旅ビトのような名作ゲームに感じてきたものに近かったと思う。
ネタバレありで感想書くよ!ここは解釈するブログだからね!
明日、モノノ怪の火鼠を見に行こうと思うのだが、ああいう情報過積載系の映像に慣れてると、
このくらいのペースと解像度の映像なら、画面の隅々まで何が起こってるか注目することができる。
このシーンの、
空気読まずにはしゃぐ犬(実に犬っぽい性格)に
魚を獲るのをジャマされてじっとり憮然としてる猫の表情とか、
画面の後方だけど、実に犬と猫らしい一幕で、めっちゃわかる!めっちゃいい!ってなる。
セリフは一言もないだけに、どれだけ楽しめるかは視聴者の読解力と想像力にかかる比重が大きいといえるだろう。
特に、動物に関する雑学は多ければ多いほど楽しめる。
猫の猫らしい性格とか
・うるさいやつやウザいやつは嫌い・シッポが立ってるのは機嫌のいいとき
・イカ耳や背中の毛を逆立てるのは警戒や臨戦態勢
・動くものにじゃれついてしまう・瞳孔が大きくなるのは暗い時や集中してる時
犬の犬(特にレトリバー)らしい性格とか
・逃げるものは追いかける習性・友好的で遊び好き・いつでも楽しいが興奮しやすくもある
プレイバウ(伏せて尻を上げるポーズ)は「遊ぼ!」の意味・群れが大事な生き物
カピバラさんののんびりしてフレンドリーな性格とか
サルともワニとも鳥とも犬とも猫とも、大抵の動物と仲良くできるのがカピバラさん。
動物園のふれあいコーナーでも近年常連だ。
カピバラ紹介ショート動画
https://youtube.com/shorts/JmX1f07B3MI?si=E1DBuvx1nOentBqq
とか、詳しい人が見ればもっと色々あるだろうが。
ただ、ワオキツネザルとヘビクイワシに関してはちょっと動物の枠超えて意味深かもな。
この映画には人間の遺物は色々登場するのだが、人間は一人も出てこない。
その代わりにワオキツネザルがやや「人間」らしさを演じるキャラと言っていいだろう。
ワオキツネザルは、カゴにガラクタ(匙とかガラスとかヒカリモノ)を詰め込んで持っていこうとする。
それは人間が災害から避難するとき家財道具を持って逃げようとするのに似ている。
動物はふつう、何も持たず身ひとつでどこへでも行くものだろうに。
旅の途中でワオキツネザルの群れに遭遇するが、彼らもまた人間の遺物、鍋のフタとかそんなものを頭に被ったり首にかけたりして、身を飾っているのだ。
そして、船のなかに美しい装飾の鏡が落ちていて、
それは途中の諍いによって割れる。
それは高度な文明も争いによって滅びることの暗喩かもしれなくて、
ワオキツネザルはその割れた鏡を惜しがってずっと持っていて、
ワオキツネザル達はみんなその鏡に夢中なのは、
なんつーか、失われた栄耀栄華、豊かさへの郷愁とか執着とかそんなもんで、
でも、仲間を探す黒猫と会って、ワオキツネザルはそれ(鏡=文明=過去)を手放して、
新しい世界へ踏み出すことができたのかなと。
でも、群れのワオキツネザル達はあのまま過去に囚われてるのかもなと。
ええい、キャラの固有名詞がないからワオキツネザルがゲシュタルト崩壊してきた。
まあ鏡というのは象徴的なアイテムだから、色々解釈の仕方はあると思う。
猫達が水面、水鏡をのぞきこんで姿を写すという場面も数度あったしな。
で、ヘビクイワシなんだが、
実際とても美しい鳥なんだけど、フローでのヘビクイワシはいっそう神秘的な存在として描かれている。
まず、羽が真っ白なんだよな~。
黒い猫と白い鳥とは対比がたいへんよき絵でありましたが。
リアルヘビクイワシは、白と黒のツートンカラーなんだけど、
そこを真っ白にしたのは省エネではなく、神性を付与するためだと思う。
世界はフローした(溢れた)水に飲みこまれていくわけだが、
その中心?に尖塔か奇岩のようなものがある。
魚や船や水はそこに向かって惹きつけられているように見える。
だってなんぼなんでも水中に魚が多すぎたし、
途中何度か遭遇した超巨大古代魚さんみたいなのも、
双方がそこに向かっていたから遭遇したってことだろうし。
で、その尖塔の天辺で、
水滴が空に吸い込まれる、重力が逆転するような現象と
なんかこう・・・オーロラからの宇宙?みたいな映像になる。
なんとなく「ポールシフト」ってやつかなと思った。
洪水による終焉と世界の再生というとノアの箱舟を想起した人も多いと思うが、
最近のスピでは地磁気逆転からのアセンション(次元上昇)という考え方があり、
あまりにも優しく賢かった真っ白な鳥は、
この三次元の物質界のレベルの学びを終えて、次の世界へ旅立ちました・・・みたいなことかと。
いやこれマジで言語化するとチープだわ。
セリフ無しで映像だけにして、視聴者に解釈させる方式で良かったわ~。
あるいは、巨大な引力を持った不可視の星が接近してたとか?白い鳥を迎えにきてたとかかぐや姫的な?
あとまあ、超巨大古代魚さんも動物キャラのひとりに数えていいかと思うが、
あいつほんまはええやつやったんや・・・ということではあり、
世界が、地球が陸メインの世界であろうが水メインの世界になろうが、
そこで繁栄する種が違うだけで結局この星は豊かなのかもしれないな・・・と思った。
洪水は陸の世界では衰退で遺憾な出来事だけど、海の世界に視点を変えると隆盛の訪れだったというか、
そういう主人公サイドとは異なる視点を導入するキャラがいると深みが増す。
そういう意味であの駄犬ども(レトリバー以外)も必要だったと思う。
みんな賢くて協調性ある動物ではリアルではないもんな。
衝動のままのしょーもないヤツもおるからリアルさになる。
てか犬種のバラつきからして交雑してなくてこないだまで飼われてた犬達っぽいので、
人類がいなくなって野犬化した背景を思うとそれはそれでドラマを感じる。
賢愚どっちもいてキャラ配置のバランス完璧だったな。
あとカメラワークも臨場感あってすごく良かった。
動物視点だから地面が近い感じがして迫力があった。
ストーリーもどうとでも寓意を読み取れるのに、
説明が無いから押しつけがましくなく品良く感じてどこか神話的で
ほんとに良い映画だった。
こういう、視聴者の解釈の力を信頼した作品がゴールデングローブ賞とかアカデミー賞とかをとるのはええよな。低予算感は隠しようもないのにそれでも賞とった。
そこには、
情報を流し込むような娯楽ばかりをよしとせず、
己で考える力や教養というものを重んじるべきだと、そういう選考基準を感じる。
柔くて甘い離乳食を流し込むのもいいが、ちゃんとおカタいものも咀嚼せんとな。
思考も筋肉も使わないと衰えるし、使えば使うだけ発達するのだから。
塔の後、水が引く時、ブイにつかまって力を抜いた黒猫がとてもすきだ。
ずっともがいてもがいて、もがき疲れてフロー(流れ)に委ねた時に道が開けるんだって気がして。
でもわりとピンチにつぐピンチ、別れにつぐ別れで、
エモい映像とかわいい動物いっぱいなんだけど見心地とか読後感は、癒されたとかよりはスリリングだったな~って感じ。
いやしかし、
最近の、最先端技術と巨額予算がゴリゴリモリモリのエンタメを見ると、
若者はついていけるんだけど、年取ると情報量が多過ぎ早過ぎで飽和してワカンネ
というのは、アニメでも音楽でもダンスでもあるあるの話なんだが。
そこで年寄りの懐古主義に合わせて往年の名作のリメイクばっかしてないで、
flowみたいな作品をもっと創っていけたらいいよな、という方向性とか希望が見えたな~。
引き算の美学というか、テーマや見せ方が洗練されてれば、スローで低解像度でも素晴らしくて普遍性のあるモノができるのだ。
AIの絵が全部にピントがあってて気持ち悪いのの対極の、
必要のないものを削ぎ落とす、あえて余白をつくってくってとこのセンスがあったな。
余白の美、それはまだAIが学習してない概念かもなあ。
ズートピア好きだけど、いうてもう10年前か。
でもピクサーもここからは超進歩したってほどじゃなくね?
この辺が臨界点なのか。
