ものがたりを解釈する

アニメ、漫画、小説、神話、あらゆるものが語りかけてくること。最も深遠な、でも誰にでも開かれている秘密に、解釈というメソッドで触れていく。

漂流団地を解釈する1 時はまさに大廃墟時代。

映画「雨を告げる漂流団地」Original Soundtrack

 

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雨を告げる漂流団地すごく良かった・・・。

これはオススメできる!

 

思春期のキャラクターたちの心情がすごく丁寧で感動的で、

ぶっ飛んだ設定や絵面に違和感を感じなかった。

 

まずネタバレ無しってことで遠回しなところから褒めると、

全体通してのイメージボードの題材がいいよね。

今という時代の雰囲気を掴んでるんだろうなっていう。

 

今冬公開の新海誠の「すずめの戸締り」も似た画面作りのようなんだけど、

 

廃墟と緑と水っていう、いわゆるポストアポカリプスなイメージ。

 

これは流行りというか、

日本の今を象徴する図像って、もうそういうのなんだろうなーって思う。

 

 


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メインビジュアルが驚くほど共通してるなーと。

これはもう監督の感性が現代っ子ってことな気がする。

30~40代の作り手として最盛期の年代に見えてる風景がこれというか。

 

無人化し、草生して水没し、時とともに自然に飲み込まれていく建築。

かつての栄耀栄華が失われ朽ちているのに、美しくノスタルジックで、盛者必衰の無常を感じさせる。

 

一昔前の流行だと、

攻殻機動隊ゴーストインザシェルとかカウボーイビパップとかアクダマドライブみたいな、

サイバーでパンクで蛍光ネオンがピカピカしてるのと、雑多で猥雑でごちゃごちゃの街並みのコントラストみたいなイメージが、アジアンでハイテクなジャパンのイメージだったんだよなー。

最近でも残響とかのPVがそんなビジュアルだけど、

これはリバイバルというか、もはや復古調というか懐古趣味というか、

ひとつのオワタでテンプレなアイコンとして使われてるんだと思うわ。


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それは高度経済成長期の日本人の心象風景でもあったんだろうけど、

 

少子高齢化時代を迎えて、地方から目に見えて人口が減り、

かつイケイケどんどんの時代に乱立した建物群が寿命を迎え始めた。

そして壊すにも予算がいるので、財布に余裕がないと後回しというか棚上げというか実質放置され。

 

今や、日本の至るところに膨大でリッチな廃墟群があるのだ。

 

時はまさに大廃墟時代。

 

廃墟巡りユーチューバーはネタに困ることがない、この現状。

 

テレビとか見てるだけだと気がつかないんだよな。

人が集まってお金が回ってるところを紹介する番組ばかりだから。

実際、観光や再開発で賑わう地域と、廃れて忘れられてく地域では後者の比のほうが高いはずよな。なにしろ人口が減ってるんだから。

 

【島全てが廃墟】第二の軍艦島「池島」に宿泊。廃墟化したゴーストタウンを全公開します。 - YouTube

【過去一】バブル時代のリゾート地が丸ごと水没してできた廃墟がヤバすぎた - YouTube

【バブル遺産】280億円で建設された宗教遊園地が廃墟化。中に大量の観音様があってヤバ過ぎた… - YouTube

バブル遺産の温泉街「鬼怒川温泉」に行ったらほとんど廃墟化してた - YouTube

 

最近こういう廃墟巡り動画をよく見てるので、

漂流団地のシチュエーションにはスムーズに感情移入できた。

 

団地か~、団地ね~。

戦争で家も街も焼けて、そこからベビーブームと経済成長が起きて、

その需要に応えるために、バストイレキッチンの生活をユニット化してコピペで作った住まい。

出来た当初は、空襲で燃えることもなく、ご近所との格差に悩むこともなく、必要十分に整えられた時代の最先端の憧れのライフスタイルだったけど、

 

そこから60年経って建物も設備も老朽化した現代では、年金老人や生活保護世帯や出稼ぎ外国人など、もはや社会の底辺が住んでるヤベー場所みたいなイメージだからな・・・。

 

立地によってはURであーる案件とかリノベでイメージを変えたとこもあるらしいけど、

【令和の団地がヤバい】驚きのアイデアで進化を遂げた令和式のリノベ団地を内見! - YouTube

 

だいたいは撤去か廃墟かなと。

【国内最大級】巨大廃墟の真名団地に行ったら誰もいない異様な雰囲気だった… - 

 

実際の廃墟動画はどうにも荒れていて物悲しいので、

そこに青く澄んだ水や瑞々しい新緑を添えて魅力的な絵に仕上げていくアニメ作りは素直に凄いと思う。

フィクションの力は人間の認識を変えるなー。

それもものすごく強力に、だ。

 

リアルの廃墟巡り動画だけ見ていると、国力の衰退に気が滅入るようだが、

物語の中で少年少女の冒険の舞台になると、キャラへの好印象がスライドされて廃墟にも肯定的な印象をもつようになる。

廃墟とはステキな場所であるという一種の先入観が生まれる。

これまで廃墟萌えは一部のニッチの趣味だったけど、

これからもっと万人にとって普遍的な原風景になっていくのかもしれず。

 

この国の現状を認識するうえで、

ポストアポカリプス作品群の発するものはとても重要になるのかもしれない。

 

 

 

本編の内容についても感想書きたいけどここまでで一旦投稿!

 

最近いまいちブログに時間がとれなくて慙愧に耐えない。(慙愧に耐えないとか言ってみたいだけ)