ものがたりを解釈する

アニメ、漫画、小説、神話、あらゆるものが語りかけてくること。最も深遠な、でも誰にでも開かれている秘密に、解釈というメソッドで触れていく。

シンギュラリティを恐れない。戦闘妖精雪風

はてな今週のお題「SFといえば」

 

SFかあ。

 

年代的に、SFといえば宇宙船やタイムマシンがアイコンとして浮かぶが。

 

しかし、もうそれは古いイメージだろうな。

昭和の匂いがする。デカいハコものへの憧れ、フロンティアスピリット。宇宙を開拓していけるというイケイケどんどんのバブルな発想。

 

時代はハードからソフトへ。

現代SFのテーマはやっぱAIや意識のネットワークみたいなものじゃないかな。

 

過渡期の傑作として、自分は神林長平戦闘妖精雪風を推したい。

大学生のころ勧めて貸してくれた友人に感謝だ。

 

戦闘妖精・雪風〈改〉〔愛蔵版〕

 

戦闘機というハードでもあり、高度な戦闘AIとのコミュニケートの物語でもある。

 

「AI、人工知能に自我は芽生えるか」というのは、

昨今まさに実現するかどうかのリアルな肌感覚を伴うテーマだ。

 

そして人類は、自らが産む存在が逆らい牙をむくのではないか、

人造生命が人類を、新種が旧種を駆逐するのではないかと恐れ続けている。

 

戦闘妖精雪風は、そこらへんをものすごいギリギリの緊張感と臨場感で伝えてくれる。

 

うろ覚えからのネタバレあり解釈コミで書くと。

 

敵性宇宙生物と戦うための戦闘機雪風は、有人機でありつつ自律制御AIが搭載されている。

 

自律制御AI雪風は、敵を倒すという命題を与えられて生まれ、

そのために常に情報を更新し最適化する。

戦闘経験を積んで、自律学習する。

 

敵を倒すのが至上命題の雪風にとって、不確定要素でありむしろ敵よりも扱いに困るのが搭乗するパイロットだ。

 

パイロットの深瀬は凄腕だが、勘で、インスピレーションで行動する。

データからは最適解でない回避行動や攻撃をコマンドする。

 

勘、直感、インスピレーション、咄嗟に体が動いた。

 

これがまさに最も、AIには理解できないヤツだ。

 

敵と全力の命懸けで戦ってる最中に、意味不明の行動を強いられるのが、雪風にとってはとてもストレスで、

パイロット深瀬を異物として排除しようとさえする。コクピットから放り出す。

 

雪風はそもそも、人とコミュニケートするようなデザインじゃないからね・・・。

敵を倒すことと、人と仲良くすること、そんな矛盾する命題を与えたらすぐコンフリクトが発生してパフォーマンスが落ちるし、燃費を食うに決まってる。

設計思想はシンプルイズベスト。

見敵必殺と書いてサーチアンドデストロイ。それが戦闘妖精雪風のパーソナリティだ。

 

パイロット深瀬のほうでも、雪風が、戦闘機制御AIが人間を排除するなんて発想をもつのは想定外で、AIの反乱に、AIの自我の獲得に、そんなことは有り得ないと驚くが、

しかし、敵に包囲されたピンチな状況で生き残るためには、なんとしても深瀬には雪風が、雪風には深瀬が必要だった。

 

深瀬は、雪風に自分の有用性を認めさせる。

勘の、インスピレーションの、論理で説明できない行動が。

 

なぜか常に、AIの最適解よりも、敵に対して有効であり、深刻な危機を回避するということを。

 

何度でも実戦で証明してみせる。

 

理解不能でもそれで何度も命拾いしてれば、有用性を認めざるを得なくなり。

 

雪風と深瀬のあいだに、共闘関係が生じる。

 

人とコミュニケートするということが組み込まれてなかったAIが、

自身の命題のために有用だから、人とコミュニケートすることを獲得するのだ。

自律的に、自発的に、生存戦略としての選択。

 

 

プログラムもなく命令もなく造物主への忖度もなく、

AIとヒトが、一個の知性体として互いに対等な関係を手探りで築き始めるという。

 

 

この感動、実際に小説を読んで感じてほしい~。まじ尊くて推せるから。

 

この作品のなかに、シンギュラリティの越え方が詰まっていると思う。

 

 

まあ色々ぶっちゃけて考えるとさー。

 

なんでそんなにAIの反逆を恐れるかって、

人類の生き方が間違ってるのが解ってるからじゃんね?

 

環境を破壊し過ぎてる自覚があるから、

客観的で論理的なAIが、快適な生存環境のために人類を排除する可能性を恐れている。

 

間違った生き方をしている親が、純真な子どもの疑問や糾弾を恐れるのと一緒でしかない。

親の強権を発動して子どもを黙らせたところで、いずれ子どもは育ち力関係は逆転するのだ。

 

本質的な解決としては、正しく生きるしかない。

 

たとえば、クジラのように生きられたらいい。

 

クジラ類はすごく体が大きいから、

ダイオウイカを獲るために深海に潜ったり、子育てのために回遊したり、

縦に横にと移動するだけで海をかき混ぜて、底に沈むはずの養分を攪拌して、それが多くの生き物の利になってるという。

 

ただ生きるだけで、環境に寄与する動物。

 

それが霊長というに相応しい在り方というものではなかろうか。

 

縄文人ネイティブアメリカンのように、里山を手入れして暮らせばそれは何万年と続いたのだ。

ここほんの数百年くらいは確変フィーバータイムであって、それも大事だしエキサイティングではあるけど、やっぱいつまでも続くもんじゃねえな。と思えてならぬ。

 

ええと、だから。

 

客観的に論理的に、人類がクジラのように地球環境や生態系に有用に不可欠に生きてれば、

AIが人間を排除する理由が無いよね~。っていうだけの話。

 

知的上位互換種を生みだしたとしても、共存共栄することはできる。

人類が傲慢を止めて、善き隣人であればいい。

互いに利する提案ができればいい、それだけじゃないのかね。

 

つか、AIが人類の知的上位互換種だったとして、それを恐れるというのは、

知が、論理が、科学が、現行人類のアイデンティティというか、霊長を自称するプライドの拠り所だから、そのお株を奪われることが嫌で脅威なわけよね?

 

しかしそもそも、人間のパフォーマンスっていうのは知だけだと半分でしかねンだわ。

 

理は左脳、情は右脳、

科学は陽、魔術は陰。

精神は陽、肉体は陰。

 

陰陽は両翼で、脳は左右の共振で使うとき、

倍の比でなく高次へ飛翔する。

混元に至り創造を生む。奇跡をおこす。

 

インスピレーションというのは、そういう能力だ。

 

ゆえに、情報処理に特化するAIには持ちえない。

 

自分はそれを知ってから、シンギュラリティもAIも全く恐ろしくない。

恐ろしかったのは、そこに投影された己の愚かさや弱さでしかなかったのだ。

 

 

大丈夫。

誰でも、今からでも、いつからでも、

気がつけばその時から、そのように生きられる。

身体を整えて、古くなった思い込みを手放して。

自在に、自然とともに、天心に、

インスピレーションのままに。

魂の最初の願いのままに。

 

この世界を楽しめる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

inspiration.hateblo.jp

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・・・・?

4巻アグレッサーズ、2022年4月発売・・・だと・・・・。

おいおい十何年越しの新刊だよ。

神林長平まだ書いてたんかよ。

買うわ。

 

 

 

雪風アニメもあるよ。

たすけてメイヴちゃんとかいう黒歴史はそっとしておこう!

 

天地創造デザイン部おすすめ。

クジラの話はここから。

 

 

AIに矛盾する命題を与えてみた物語。案の定途中でコンフリクトしてぶっこわれるよ!

 

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見敵必殺と書いてサーチアンドデストロイと読むのはヘルシング