ものがたりを解釈する

アニメ、漫画、小説、神話、あらゆるものが語りかけてくること。最も深遠な、でも誰にでも開かれている秘密に、解釈というメソッドで触れていく。

すずめの戸締り 小さいつづら

 

小説 すずめの戸締まり (角川文庫)

 

見て一日たって、忘れないうちに気になったことをメモしとく。

二周め行く前に見なおす用ってことで。ネタバレあり注意で。

 

 

● すずめの戸締り、というタイトルから

すずめのお宿あるいは舌切り雀からモチーフをとるのかと思っていた。

いじわるばあさんがすずめの舌を切ってしまう。

やさしいじいさんはすずめのお宿(常世)へ誘われる。

歓待されてお土産に、小さい葛籠と大きい葛籠のどちらかを選ぶ、ってやつ。

小さいつづららしきものは出てきた、「すずめのだいじ」の箱だ。

絵日記という過去の感情や情報がそのまま収まっているものが入っていた。

では大きいつづらは? 大きくてヤベーものの詰まった箱・・・というとミミズという災禍が溢れてくる後ろ戸そのもののことだろうか?

 

ここで追記!

「すずめのだいじ」と書いた箱は二つあった!

すずめの部屋に円柱形の缶があり、草太が椅子の足の4本目の位置に置いてそこに座っていた。

 

ということは、どっちが小さいつづらなのか?

缶の容量的にはそう変わらないように思える。

絵日記は宝物だとするなら、

円柱形の缶は開けられたわけではないが、その上に座った草太は要椅子にされるという災難に遭うわけで、

円柱の缶のほうが大きいつづらっぽくはあるか〜。

 

 

 

 

新海誠のフェティッシュは今回も全開。

椅子になってJKに座られたい踏まれたいという性癖は素直に気持ち悪い。

ただまあ。歪さをうまく昇華するとただ健全であるより魅力的な表現になるものだ。

口噛み酒はうまく必要な要素として落とし込まれていたが、イスは・・・?

そういえばなんでイスなんだろ。三本足の椅子・・・、

要イシと要イス…

あーいや、三本足といえば八咫鴉か。東征を導くもの。奇数、陽、太陽の意味もある。

カラスじゃなくてイス…?(まだ納得いかない)(図像的にも意味的にもイス≠トリ)

 

 

● 名と神話ネタ、岩戸すずめ

天岩戸とアメノウズメという名前。

天照大神が素戔嗚が暴れた件のショックで岩戸に隠れ、天鈿女命が踊り、天手力男が岩戸を開き、天照大神が出てくる。

素戔嗚が天照に会いに来たとき山河が揺れた、地震が起きたという記述もあるな…。

日が隠れて再び現れるという日蝕や太陽再生の神話であり、

戸の中に隠れていたのは、母を亡くして傷ついた幼いすずめだった。

幼いすずめは戸から出る。太陽は再び地上で輝くと。

細女=すずめ 天照=幼女すずめ 

 

では、天手力男=宗像草太?だろうか。

しかし天手力男は戸を開ける神なんだよな。草太は戸を閉める人だ。逆ゥ!

細女と対になる神には猿田彦もいる。道案内の神、四辻の神、道祖神や土俗的な神の習合した性格の神だ。

四辻というのは交差点、隣り合う二つの世界の境、その扉の守り人である閉じ師とイメージ的に近いのはそっちかも。

宗像というのは九州の宗像大社を思わせるけど、あれは三姉妹の海の女神を祀るとこだよな?

三人の海の女神・・・、岩戸すずめ、二ノルミ、部千果、三人の女性は姉妹のように縁があるってことかな? 宮は神社のことだし、スナックの店名はハーバー(湾)だ。海関係。

 

そして三女神は天照と素戔嗚が和解したときに生まれた神々でもあるからー、つまりえっとー・・・。

 

まあ、神話でガチガチに答え合わせするべきものでもなかろうが、

草太の白衣を着たすずめの恰好は、前を斜めにピンでとめて腰をしばって古代日本っぽさではあった。こういうの。

最後に幼女すずめは振り返って草太を見たから、

冒頭のすずめは「どこかで会ったことありませんか?ってそれじゃナンパか」ということになるわけだな。

 

 

●黄色いモンキチョウが二匹。

胡蝶の夢プシュケなど諸々、蝶は人の魂のメタファとして普遍的なもの。

作中何度も黄色い蝶の場面がある。

二匹、というのは母と娘かと思ったけど、両方ともすずめという意味にも、他の意味にもとれるなあ・・・。

 

 

● 天気の子との反転。

空の白い水の龍と、地の赤い火の龍、という図像の反転だけでなく、

人柱や要石、生贄、命を代償に使って天災を防ぐシステムを破棄するか続行するかというテーマの反転がある。

 

すずめは「死ぬのは怖くない」「草太さんのいない世界が怖い」「私が代わりに要石になるよ!」っていう、芹沢のいうところの自分の扱いが雑な人だ。

叔母と和解し、道中で優しい人達との交流があり、草太が好きなのに、

それでも自分を大事にするっていう基本の心構えがなってない。

自己肯定感の低さ、自己犠牲、人柱を受け容れる陽菜と一緒の心の段階であり、

 

須賀のいう「人柱一人でもとの天気に戻るなら歓迎だね。てか皆そうだろ」っていう、

天気の子では否決されたはずの、皆のツケを誰か一人に押し付けるやりかたですずめの戸締りは解決するんだよなあ・・・。

ダイジンとサダイジンは人間じゃないからオッケー☆という話ではないと思うぞ。

 

でもまあ、反転、陰陽、となると、どっちが善とか悪とかではないからな~。

 

 

● あと反転といえば、

すずめの戸締りは道中がやたら順調だよね。

愛媛のミカン落とした民宿の子も、神戸の双子の母でスナックのママも、

初対面なのに好意的で親身で、そしてすずめに親切にした日は普段より客が多かったという。

 

天気の子では、都会の大人はヤなヤツが多かった。

ホテル街の女衒の男、二人の刑事、児相や警官、みんな陽菜と帆高に親身じゃなかった。

 

天気の子では周囲が逆風で、尽くす意味や価値を見いだせない社会だった。

すずめの戸締りでは追い風だ。人も運もすずめ達の味方。みんなに尽くされたぶん、みんなに尽くさなくてはという気持ちになる。

 

 

 

 

● っていうか、地震が、ミミズが、人が去った寂しい場所から、人が神から自然から借りたものを返さない土地から湧いて出てくる災いであり、

後ろ戸の戸締りを生業とする閉じ師がいるということは、

 

3・11の震災は誰かがミスったから起きた人災の側面がある、という見方が出てきちゃうんだよな~。

 

天災なら誰を責めようもなく諦めもつくはずのところ、

天災じゃなくて人災だというなら、そこに責任を追及するっていう発想が出てきて、

原発、東電の責任を問い、賠償を求めたように、

戸締りをすべきだった人達の怠慢を責めかねないよね。民衆ってさ・・・。

家業副業、ボランティアでやっていいような仕事じゃないってことになるよね。

じゃあやっぱ秘密でこっそりしないとってことになるのかね。

「大事な仕事は見えないほうがいい」って謙虚なだけじゃなくて、人が責任を負えるようなものじゃないからって意味もあるのか?

 

いやまあ、野暮なツッコミではあるのかもしれない。

 

つか、震源地は海だったしな・・・。

地震より津波こそが脅威だったわけで。

津波を鎮める呪的システムはまた別とか?いやいや・・・。

 

● 体癖。

新海誠のキャラって体癖わかりにくい!

キャラありきじゃなくて脚本ありきって感じがする。

作家界隈ではよく、良いキャラクターが造形できると、そのキャラが勝手に動いてくれる、キャラが物語を導いてくれるとか言うけど。

新海誠とか宮崎駿は違うタイプな気がするわ。筋書きが主でキャラが従って感じ。

それでも分析を試みるなら

草太2種、陰な雰囲気、教員に適性、家業にマジメ、椅子にされる境遇に馴染めるメンタルは、役を与えられるとそれに成りきれる2種っぽさか。

すずめ9種、身体能力の高さというか、考えるより先に走り出してる直感的なとこ、

車が走ってる道路に飛び出しちゃってなんとかなるっていうのは、9種の思いきりと野性かなあ。

しかし9種は最も愛が重いタイプなので、叔母の愛に「それが重いの」とか言わなさそうかあ~。う~ん。2周目の課題だな。

ダイジン3種か6種か。懐っこく子供っぽくかわいらしく、早合点でうっかり、注目を集めたがるのは3種かな~。

でも「お前は邪魔」の攻撃性とか「人がいっぱい死ぬよ?」で脅して誘導したり、結局は自己犠牲を選ぶのは6種なのか?

 

● で、キャラの名前をググってたら、草太のじいちゃんの名前、宗像羊郎っていうのかよ・・・。

 

え、羊って草を食べるってことだよね。

めっちゃ広範囲に草食べる系の、割とアホなイメージの動物だよね。

じいちゃんはアレか、毒親なの・・・?

 

草太はじいちゃんに頼りたくなさそうで、

じいちゃんは草太が要石になってもしょうがないねって態度で、

しかも、気になってたのはじいちゃんは黒デカ猫のサダイジンにすげー敬った言葉遣いだったのに、

草太は要石だった白チビ猫に対する態度がさぁ。なんも知らなさそうっていうか、

なんかこう、重要なことを教えられてなかったのかな?っていう・・・。

 

草太が自分の扱い雑っていう自己肯定感低めっていうのは、

育て親の愛情が条件愛だった可能性が高いんだよなあ~。

 

じいちゃんは草太に身を守る術を教えず、要石にすることも想定内で育てた可能性がギルティ・・・。

 

草太・・・、でもほら友人には恵まれたしさ・・・。イケメンでモテてるしさ・・・。

じいちゃんもすずめにヒントはくれたわけで、人間の心は複雑だし禍福は糾える縄の如しだし、幸せになって・・・。

 

 

 

● 開墾、開拓の対義語としての閉じ・終い、の戸締り。とじまり、とじまい。

パンフレットにあったとおりだけど、近代の人間ははほんとやったらやりっぱなしだよね・・・。今の日本マジで廃墟だらけで。

開墾、開拓の対義語さえ辞書に無いのだ。対義の発想が無い。

墾田永年私財法の時代から、開拓したら自分らの所有だと思ってる。

少子高齢、人口減少の時代になって、

大地から自然から借りてた土地をお返しする、という思想が出てきたのはすごく重要だ。

借りたら返す。

原状復帰が望ましく、なんだったらキレイにして返すのが、貸し借りの礼儀というものだよな・・・。

あそっか、開墾開拓の対義語は原状復帰とか復旧ってことになるかー。

いやー、遊園地とか団地群とか解体して原状回復工事してたらお金いくらあっても足らんなあ・・・。

 

● あとは、鍵をかけるという動作について、光る鍵と光るスマホの関係とか、なんか気になりつつ言語化できるとこまでまとまらない。

 

 

 

 

しかしアレだな。色々書いたけど、

すずめの戸締りはややテーマの詰め込み感があるというか、

その割に心惹かれる謎の部分が無いというか。

 

 

天気の子≧君の名は>すずめの戸締り ていう評価かな~。

 

 

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