天気の子、DVDで観なおした。
このタイトルコールの雲が渦巻く絵、空に開いた穴って感じがとても好きだ。
異界、彼岸、隣り合う世界、近くて遠い世界へのゲートって感じがする。
空、という字がそもそも、穴と工の組み合わせでできてるしね。
工、は点と点を結ぶ線、どこかに繋がる道、トンネルみたいな意味だ。
久しぶりに観たけど、
高精細の映像、大量の情報をテーマソングにのせて流しこんでくる新海誠メソッドはすごく気持ちいい。音楽PVみたいな、現代的な感性だ。
順を追って考える前に、言語や論理の左脳の情報処理が追いつく前に、
音楽で右脳を活性化させて、ギリギリ理解できるかできないかくらいのスピードで、
とにかくイメージを脳に流しこんじゃう感じっていうか?集中を要求されるんだよな。
サブリミナルまではいかないけど、それでもオーバフロー感があってイイ。
情報があふれてなにも考えられない、というのは快感なのだ。
これから梅雨っていう、蒸し暑さと雨の時期に見ると没入感もひとしお。
さて、天気の子についてはもう結構書けるだけ書いたって気もするんだけど、
なにか書かないとDVDを買った甲斐がないというものw
そういえば、須賀の嫁で萌花の母、明日花が晴れ女だったのでは、という考察があるらしい。
陽菜と同じに日、太陽、晴れをあらわす字の入った名前だし、若くして亡くなったのは陽菜の母と一緒ではあり、どちらも死因の描写は濁されている。
萌花にも小さく日の字があり、雨に体調を左右されるあたり晴れ女の素質がありそうでコワイが。
が、
いやそれはどうなのか。嫁が晴れ女だったとうすうす察してたうえで、人柱を容認する発言してたら須賀の性格が鬼畜すぎる気もする。
ただ、警察署から逃げた帆高の行き先、代々木の廃ビルをなんで須賀が知ってたのかはそれで説明がつく気もする。
嫁から、鳥居のことを聞いていたんだろうか、とか?
いや、まあ、ムーの取材で怪しい噂には詳しいだろうから、天気の巫女と代々木の廃ビルの関連について心当たりがあっただけかもしれない。
陽菜が空に昇っていく夢をみて、夢の場所に見当がついたってことでも辻褄はあう。
それより、ホテルでバスローブから抜けるように消えた陽菜が、その後の場面でいつもの服に靴まで履いてたことの辻褄のほうが謎。
ホテルのドア前に長靴あるしなぁ。どうなってんだ。まぁいいけど。
で、代々木の廃ビルの鳥居には、精霊馬、キュウリの馬とナスの牛の瑞々しいやつが毎回お供えされているので、誰かが頻繁に訪れていることを思わせる。
お盆の時期、地獄の釜の蓋も開く時期、亡くなった人の魂を乗せて早く来てほしいから馬、ゆっくり帰ってほしいから牛、という彼岸と此岸を行き来する乗り物が精霊馬だ。
多分、あれが供えられてなかったり、萎びてたりしたら、帆高は彼岸に行けなかったんじゃないか?
あれは地味だけど、彼岸へ渡る必須アイテムな気がする。さす新海。オカルト方面ぬかりなし。
雑草とかはほったらかしでも、あれだけはちゃんと手入れされているわけだ。
で、陽菜や陽菜の母のほかにもああいう鳥居をくぐった天気の巫女、人柱は複数いるんだろうな。
占いおばば(CV野沢雅子w)もガイアのホメオスタシスで晴れ女が生まれやすくなってるとか言ってたし、
東京を守る大量の人柱、とかいうムーの見出しもあった。
彼岸の空にいる水の魚たちが、今までの人柱達だったとしたら、関東周辺地域の800年分にしても相当の数だ。
ただ、陽菜の母は晴れ女の代償が衰弱からの病死のようなのに、
陽菜は体が透けて浮き上がり、生身ごと彼岸へ神隠しになって、
多くの人が同じ夢を見て、夏に雪が降る観測史上最大の異常気象が一気に晴れわたるという事象の大きさになったのはなんでかっていうと、
まあ、そりゃあんだけ派手に晴れ女ビジネスを展開すればそうなるわな。
凪センパイが「みんなお前のせいじゃんか!姉ちゃんを返せよ!」と仰るとおり、
帆高のプロデュースのせいですともww
より多くの人々の想いを汲みあげ、彼岸と此岸を繋げれば繋げるほど、天と人をつなぐ細い糸は太くなり、効果も反動や代償もまた大きくなるというだけだ。
まぁ、あちらの存在に近づくとか、彼岸の存在に親しむこと自体はそんなに悲惨なことでもないけど。他作品ならそれを目指すキャラもいるようなことで。
代償、代償かー。
やっぱり一人娘の体調と、知り合い程度の女の子の命を天秤にかけたら、
愛娘をとるっていう心情もあるのかもしれない。
たとえそれが愛妻を死においやったシステムでも、容認し、維持することに同意する、か…。
あまり須賀を嫌いになりたくないのだがw
「人柱ひとりで元のとおりに戻るってんなら歓迎だ。てか皆そうだろ。」
「誰かが何かの犠牲になってそれで回るのが社会ってもんだ。損な役割を背負っちまう人間は必ずいるんだよ、普段は見えてないだけでさ」(小説版)
そうだな。それが、この世界の大人たちの態度だ。
過労死が出ようが自殺が出ようが、ブラック企業はなくならない。
途上国の安い労働力、非正規雇用、格差を使って利潤を追求し、現場の福利厚生など知りもしない。
この社会でただ生活しているだけで、弱者を踏みつけにしていることに、同意しているに等しい。
誰も彼も、自分もだ。
陽菜の青い石の首飾りは、母の腕にあったものと同じもの、形見だ。
彼岸の空で、帆高の指輪は落ちたのに首の石は落ちなかったこと、
彼岸から帰ってきた鳥居で、首飾りが割れていること、
あの石は、晴れ女であることを示すアイテムで、陽菜の母も晴れ女だったとして、
じゃあ、帆高の「晴れ女と引き換えにこの空は晴れたんだ、皆なにも知らないで、こんなのってないよ」とか「皆なにも知らないで、知らないふりして!」
っていう、皆の利益の代償を引き受けてるのに知らん顔されて、自分の大事な人が失われる痛みの言葉は、
母を失った陽菜が、叫びたかった気持ちでもあるよな。
母の死後、陽菜は弟と二人で生活する、働いて炊事もして、母の役を果たそうとする。
「私たち誰にも迷惑かけてません!」「私たち、 ばらばらにされちゃう。」
児相にも警察にも頼ろうとしない。大人に助けを求めない。大人をまったく信じていない。
児相がくるなら夜逃げも辞さない、断固拒否の姿勢だ。
なんだってそんなに頑なに、大人に心を開かないのかとも思ってたけど、
それは多分、皆の利益の犠牲になって死ぬ母を、誰も助けてはくれなかったのを見たからだ。
皆の利益には、陽菜と凪、子どもたちの利益も含まれている。
子どもの衣食住を整えて、学校に行かせて、習い事をさせるために、
母親がひとりでどれだけ頑張らなくてはいけなかったのか、陽菜は見ただろう。
母の代わりに弟を養おうという、中学生には荷の重い決意をしたのは、
自分が暮らしていくために母を犠牲にしてしまったという、自責と贖罪の気持ちもあってのことかもしれない。
そして、凪と支えあって一年暮らして、
晴れ女ビジネスで、尽くした人に笑顔になってもらう嬉しい気持ちを知った。
陽菜は、母親業と晴れ女、母のしたことを追体験して、
帆高は、母を失った陽菜の気持ちを追体験している。
母の気持ちを身を以て知った陽菜と、
陽菜の気持ちを身を以て知った帆高だったから、
「自分のために願って」
は彼岸から人柱を連れ戻す、力ある言葉になったのかもなあ。
心が、認識の深さが、言葉に力を与えるんだ。
帆高の答えは、きっと陽菜が母親に言ってあげたかった答えでもある。
「ただ、もう一度あの人に会いたいんだ」これもそうか。陽菜の願いでもある。
彼岸の空で、陽菜は水の魚になった母と会えたのかもしれない。
迎え火をまたいで、帆高が来るまであの場所で母に守ってもらっていたのかもしれない。
帆高が彼岸から人柱を連れ帰ると、雲と竜、800年分溜め込んでた雨が3年かけて降ってくるので、晴れ女システムは一度ご破算になったと思われる。
陽菜以外の天気の巫女たちも、空と繋がる力を失ったのだろうか?
それとも、また誰かが代償を払って利益を得る旧体制を繰り返すのだろうか?
もう、誰の犠牲にもならなくていいことに、
誰のせいにもしなくていいことに、気がつけるかどうかだ。
自分より弱い誰かにツケを押しつけて楽をして、
辛いこと苦しいことは自分より強い何かのせいにする、
他責の世界でうわべだけの繁栄を繰り返すより、
雨の降り続く世界でも、疫病のはびこる世界でもいい、
自分のために願って、自分の心で決めた、
その結果の世界を引き受けて、生きていたいんだ。
・・・・、
さて、解釈も五本目となると、やや強引な感じが否めなくもなくもなかったな・・・。
今後DVD周回して気がついたことがあったら、余程でないかぎりこの記事に追記で済まそうと思う。
今までの記事のなかでは、手錠の意味がムスビで座標だと解釈できた2本目と、
日本神話の照応を読み解けた4本目が書いていて面白かった。
はい早速追記。
最近こちらのブログ
https://gunber.hatenablog.com/
がんべあの「ブレない」キャラクター&ストーリーの作り方、で
キャラクターには表の顔と裏の顔があるっていうテーマをずっとやってるんだけど、
それで帆高の性格に合点がいった。
助けてもらったお礼に食事をふるまったり、
未成年に酒をすすめる大人をたしなめ、ジュースに取り換えたり、
訪問先に手土産を用意したり、
バイクに乗るときは非常時でも必ずヘルメットを着用したり、
誰に言われなくてもルールを守る、律儀な性格の、無害そうな少年の見た目通りの表の顔と、
衝動的に家出して、
衝動的に拾った銃をカバンに突っ込んで、
衝動的にその銃をぶっぱなし、
衝動的に警察から脱走してチャリをパクろうとする、
アナーキーで危険な性格の、裏の顔の帆高がいるんだ。
その二面性があるから、
会いたいあまりに800年モノのシステムをぶっ壊して、想い人をあの世から奪還するのに、
そこから一変して3年も全然まったく陽菜と連絡とってない、なんてことになるんだ。
保護観察期間だからと律儀に自粛して、ルールを破ったこと、世界を変えたことを律儀に反省してたんだろうね。3年も!
…、その性格、ヒくわ〜。
殉教者とテロリストが同居してる危うさだわ~。ないわ~。
エニアグラム分析でいうと、1完璧主義者と6堅実家の裏表・・・か??
そこはまったく自信ないけど、がんべあさんありがとうございました。
追記
がんべあさんによると、
4芸術家と9調停者の裏表っぽいとのこと。
エニアグラムはちょっと手に負えないので、(^q^)
とりあえずシャドーとペルソナぐらいの理解にとどめておけばいいことに気がついた。
律儀なイイ子のペルソナ帆高と、アナーキーのシャドー帆高がいて、
状況によってどちらかが対処してるんだっていう。
まあ、ちょっと心理学上の本来の意味と違うけどなw
更に追記、
廃ビル屋上の鳥居、雑草は手入れされてないのに、
毎回キュウリの馬とナスの牛の精霊馬がみずみずしくお供えされてて、
それはなんでかっていうと、精霊馬は彼岸へ渡る乗り物だから、アレがないと帆高は空の上に行けないんだ、と書き足してて思いついた。
「あの煙に乗って、あの人は向こう岸から帰ってくるんだよ」立花富美おばあちゃんのセリフと迎え火の煙もそうか。
煙も地上と空、彼岸と此岸を繋ぐ通路になり得るのか。なるほど。
廃ビルで帆高が空に向けて一発、銃を撃った。
銃を撃てば、硝煙が上がる。
その煙を辿って、帆高は彼岸へ行けたわけでもあるな。
鳥居をくぐった次の瞬間、空の上にワープしてるのは突飛な場面転換のようで、
鳥居が出入りする扉で、煙が道で、精霊馬に乗っていける。
さりげない舞台装置、伏線があるんだなぁ。
煙が地上から上空への通路なら、
雲間から差す光、光の水溜りのようだと言われたエンジェルラダーは、上空から地上への通路だなー。
陽菜が冒頭で彼岸の空へジャンプするときも、扉、通路、乗り物の条件が揃っている。
ムーを堂々と出してくるあたり、新海監督は相当オカルトに自信あるよな。
爽やかで切ない青春恋愛映画に、どうオカルトネタを潜ませてくるのか今後とも楽しみ。
いっそオカルト全振りの映画も見てみたいが、
星を追う子どもはイマイチだったから、スパイス程度が新海監督の適量なんだろうな。