ものがたりを解釈する

アニメ、漫画、小説、神話、あらゆるものが語りかけてくること。最も深遠な、でも誰にでも開かれている秘密に、解釈というメソッドで触れていく。

天気の子を解釈する4 トリックスター、日本神話からの視点。

愛にできることはまだあるかい/天気の子

 

天気の子、まだ上映中なのか~。ロングランだなあ。

 

じゃもう少し書いておこう。

 

オカルトを越えていく爽やかさ軽やかさにすっかり魅せられて失念してたけど、

君の名はと同じに、名前に意味が込められていたので、そこから。

 

陽菜、帆高、凪、

これが日本神話の三貴神、三姉弟天照大神、月読大神、素戔嗚神と照応している。

(以下カタカナ表記)

 

陽菜の陽はもう太陽神アマテラスだ。「二人とも弟です」という発言がある、長女、長子、姉だ。

 

凪、が海に関係する名前なのでスサノオかと思うけど、

 

スサノオは最初は海を治めるよう言いつけられた神であり、
海は潮の温度差から風を生むところなので、
スサノオは台風や暴風雨、風の神でもある。

 

凪、というのは風がない状態のことだ。イマイチ感。

 

帆高、のほうが海と風のイメージだ。海で船に帆を張って、風をつかまえる。

 

帆高がスサノオなら、あとはツクヨミが凪ということになる。

河合隼雄の中空構造論なら、対立する二柱の神の間に、なにもしない神がいる。

中和、仲介、緩衝地帯、グレーゾーン、なんとなくなあなあにする役割の神様だ。

アマテラスとスサノオという対比なら、その時ツクヨミはなにもしない神だ。

凪センパイは、まあ確かに君の名はでいうところの奥寺ミキのポジションかもな。
「俺ガキだからさ」と力のなさを自覚してる。

 

帆高が凪をセンパイと呼ぶのもそれっぽい。

兄がツクヨミで、末子がスサノオなわけだから、兄に敬称がいるわけだ。

 

で、帆高が作中でなにも成長してない、共感しづらい主人公だという意見がある。

実に最もだと思う。

帆高は徹頭徹尾アナーキー、子供、あれも嫌これも嫌だとワガママを言い通したキャラって感じだ。

 

大人と子供の間で揺れてるのは須賀や陽菜や夏美だ。

 

っていうか、大人と子供は対比であり両天秤であり、内と外、公と私、夜と昼、陰陽のように一人の人間の中にその両方があると良いものっていうか。

子供が、成長して大人になるのが善いことかっていうと、ラストの社長須賀みたいな描かれ方なので、そうではないんだな。

 

子供なのに、無理して大人の振る舞いをする陽菜に、子供でいいんだよ、と帆高は伝えに行ってるというか。

 

帆高はやりたいことをやりっぱなしで責任をとらない。
家出も考えなし、
銃を拾うのも、銃を撃つのも考えなし。
拾った猫も須賀任せになってるし、

陽菜と凪を連れて放浪するのも考えなし。結局は警察と児相が保護した。

なんのアテもなくとにかく行動しちゃう。なんっっにも考えてないよ帆高ww

 

しかしまぁ、責任を負えるかどうか、とか考えてたら行動できなくなるというもの。

 

凪のように、子供である無力を噛みしめてる子供なんて、物分かりが良過ぎて気の毒になるというもの。

ただ、そうしたいんだという奔放で無軌道な衝動、情熱の方が先にあるもので、そういうのが子どもらしい心の在り方で、
責任をとる能力はその都度、色々周りの人に助けられたり間違いながら獲得していく。そんなもんで良いっていうか。

 

凪と帆高の対比で見てみると、
やっぱり帆高の方が末っ子のスサノオ的だ。
凪センパイは無力を自覚するあまり事態を動かすことができなかった。
なんも考えてない、やりたいという気持ちだけの帆高だから、無茶苦茶ができた。
でも、それで結果としては色々良かったわけで。

 

帆高は、成長する少年キャラじゃなくて、
神話的な破壊神やトリックスター
秩序を破壊し、新しい波を起こすキャラなんだと思う。自身は変わらず周りを変える触媒のようなキャラクターだ。

変化、ゆらぎ、エラー、異分子、新しい可能性、そういうものを内包することで大きな総体は健やかさを保つ。

 

まあ、TV版24話構成なら成長要素も入れてきたかもしれんけど。

だから、視聴者が共感できるのは帆高じゃなくて須賀のほうだったりするんだな。

 

トリックスターというのは覚えておいてドヤれるステキな概念だ。

一応ウィキ貼っておく。はてなキーワードの説明でも十分だけど。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B5%E3%83%8E%E3%82%AA

 

で、トリックスターのウィキ見て、次にスサノオのウィキ見たら、
やっぱ帆高の雛型っぽい。

 

スサノオは出雲の根之堅洲国にある須賀(すが)の地へ行きそこに留まった。とあるw

須賀wwのところに身を寄せたとwwはいww

 

スサノオイザナギが鼻を濯いだ時に生まれた神だ。

鼻、息吹から生まれた神なので風の神でもあるわけだが、

 

同じく三貴神スサノオを題材にした荻原規子の空色勾玉でこんなセリフがあったような。
「あの子は父神の息吹から生まれた。
目から生まれた我らより、父神の内面に、心に近いのかもしれない。」

 

イザナギは、妻イザナミを黄泉から連れ戻すことはできなかった。
振り返ってしまい、千曳の岩で別れてしまった。

その後の禊、濯ぎで生まれた第三子、末っ子のスサノオは、
父の心の化身ゆえか、イザナミに会いたいんだと泣き喚く。

 

「あの人に会いたいんだ!」と泣き喚くwwはいはいww

 

で、まあ。
スサノオは会いたい人に会えたかっていうと会えないんだけど。
イザナミは千曳の岩以降、神話に登場しなかったはず。
スサノオは紆余曲折のあと、根之堅洲国、黄泉まで行くんだけどね。

 

君の名は、では黄泉から死者を反魂させる。
神話のバッドエンドをグッドエンドに改変してるわけだが。

天気の子でも、帆高は会いたい人に会い、連れ帰ってきている。
スサノオのバッドエンドをグッドエンドにしてる、と言えるかもな。


スサノオイザナギの妻への想いの化身、と解釈するなら、

陽奈はアマテラスでもあり、イザナミにもなる。オーバーラップで見れる。


アマテラスが姿を隠したエピソードといえば天の岩戸だ、

その場合、帆高はアメノタヂカラオ、夏美がアメノウズメって感じにもなる。

あのカーチェイスのドタバタが、岩戸の前でアマテラスの気を引いた祭事ということになる。

 

天の岩戸のウィキも一応。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A9%E5%B2%A9%E6%88%B8

スサノオが無茶苦茶するから、アマテラスは天の岩戸に隠れてしまう。日蝕の神話化でもある。

姿を隠した太陽を呼び戻すのがアメノタヂカラオとアメノウズメだ。

でも天気の子は雨エンドなので、太陽が再び顔を出したというこのエピソードはあまりそぐわないとも言える。

陽奈は帰ってきたんだけど。うーん。青い石が割れてるからな。晴れ女=巫女=アマテラスでない、超常の力のないただの人間の女の子として帰ってきた、という感じか。

 

ややこしくなってきたww

まあ、なんにせよ、豊葦原中国の神スサノオが、
高天原のアマテラス、黄泉のイザナミを、
その世界を治める神の座から、違う世界に連れて帰ってしまうとなれば、それは大変なことだ。

帆高が陽菜を連れて帰ってくるのは、神話のお約束ではありえなかったことだ。

高天原も黄泉も、あの世、彼岸であるという点では変わりない。

人の世に神や死者をもろ連れてくるのは、基本そういうことはしたらダメなやつだ。

 

それは世界の秩序の破壊だ。


日本の神話では、結局、アマテラスやイザナミ、維持神が世界を越境することはない。

もし、維持神を据え置いて安定した世界から、 安定の象徴である維持神を連れ出したら、 世界は、再び混沌とする他にないだろう。


名もなく、わざもない、万象未だ凝らずあらわれぬ、原初の神話的混元へと回帰して、

創世神話、国生みのやり直しになりそうw

 

実際、日本神話やギリシャ神話を読んでいくと、
最初の方はダイナミックでスケールでっかくてワクワクするのに、
主神が世界を治めるヒエラルキー構造が出来上がってしまうと、なんか話が小さくなっていくというか。

最初は、天地とか時間とか生死とか、そういう大きな法則の神様があらわれてきて、
後半は、人間とそんなに変わらない神様や英雄の旅とか恋とか争いとか試練とかになる。

 

熱かったマグマが冷えて固まって形をつくるように、
世界はエントロピーが増大して複雑になり、
細部が精緻になると同時に、全体は大きな動きを失っていく。

 

創世の神話が、国譲りとかになってだんだん人間の歴史に繋がっていく。

 

インドの神話とかだと、創世神、維持神、破壊神、
ブラフマン、ヴィシュヌ、シヴァ、とか三神一体構造になってて、
世界が安定してくると破壊して、また新しい循環(サンサーラ)が始められるという思想になってる。

 

完成したシステムを維持し続けるのでは熱的死を免れ得ない。複雑化は硬直となり、権力は必ず腐敗する。
循環、環構造、生々流転の方がずっと長~く面白い話を続けられる。

この構造をもつインドの神話は量がすごい。そういえば。リセットして周回できるんだな。

 

破壊を、死を内包すれば、それは代謝となり、総体の健康寿命は延びる。

 

破壊神、トリックスタースサノオが、
維持神アマテラスやイザナミを違う世界に連れ出すことが出来たというなら、それは秩序の破壊だが、
古くなった世界の破壊、硬直した世界の破壊でもある。 新しい世界の循環が始まる。

 

人柱で晴れる旧システムを破棄して、
今までと少し違う世界を、国生み、創世の神話をまた語り始めていいんだよな。

 

天御中主・混元、産霊神と上産霊神、陰陽の原理の神から始まる神代七代創世神はおかくれになり、

喜怒哀楽のある人格神があらわれ、万物を生じ国生みとする。

高天原豊葦原中国、黄泉と、性質によって棲み分けが決まり、

主神が治めるヒエラルキーの構造が出来上がり、津々浦々までその威光を行き渡らせシステムに組み込んでいく。

世界の在り方が安定したが故に、語り終えられてしまった日本神話に、

破壊を持ち込んで、リセットして、新しい文脈を開拓した。

そういう物語と言えなくも、なくもなくもないのではないだろうか。



 

うーん、元ネタで語ろうとすると、予備知識がいる感じになってオタ向け感がいなめないな・・・。

日本人なら古事記日本書紀のあらすじくらい頭に入っててもいいんだけど、本当なら。

まぁ戦争負けたからしゃーない。


それを知らなくても、天気の子はライトなボーイミーツガールとして楽しめるのがイイところなんだよ。

だから、まあ、これは余談だな。

 

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